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インタビュー

SOULHEAD(2)

かっこいいことは誰にでもできる

 本作には、ディストーション・ギターが刺激的に狂おしく唸るヘッド・バンギング・チューン“At The Party”や、軽やかなニュー・ジャック・スウィングに乗せて清涼感あるメロディーが溢れ出す“A pretence of love”、またTSUGUMIいわく「サビはあえてネイト・ドッグっぽくしてみたかった」という2人のウェッサイ嗜好を表出させた“D.O.G.”や、TSUGUMI制作トラックが初めて楽曲のオリジナル・サウンド・コンセプトに採用された毒舌(!?)変態(!?)ヒップホップ・チューン“STAY THERE”など、ヒップホップ、R&B、ロック、AORとさまざまな音楽を余裕綽々で呑み込んだ、多種多彩なSOULHEADサウンドが展開されている。が、そんななかでも特に耳を引くのは、“いつでも君のことを”“このまま”など、ほぼ日本語で綴られたスムースなミッド・バラード。その2曲があまりに印象的なこともあってか、本作は前作に比して、ラップ指数減少/歌モノ指数増加といった感もある。

「いままで私が思っていたラップと、日本語のラップでは根本的に何かが違うなと思ってたの。でも、最近Rhymesterとかを聴いてるんだけど、頓知っていうの(笑)? 彼らのラップは内容が一語一語わかるし、そのおもしろさがハンパなくて、日本語ラップのそういう部分は採り入れようと思った。だからラップは減ったけど、内容は前より濃いと思う」(TSUGUMI)。

 歌モノ増加の要因に関して、YOSHIKAは「TSUGUMIが作るものに歌モノが増えたから」とアナライズするが、当のTSUGUMIは自分の心境の変化をこう語る。

「やっぱり中身を求めるという考え方が増えた。いままではカッコイイかカッコ悪いか、イケてるかイケてないかって見てたものを、それとは違うところで感じられるようになったんだと思う。それはカラオケに行くようになって、みんなが歌う曲を聴いたりしてることにも影響されてるかもしれない。いままでは聴かず嫌いだった曲もあったのね。でも、カラオケで歌詞を見て〈超いい曲!〉とか思うこともあるし、そういう曲って、その歌詞を伝えるようなメロディーになってたりする。余談だけど、だから、いま私、河口恭吾さんの“桜”が好きだもん(笑)」(TSUGUMI)。

 外見ではなく中身勝負。いや、外見のかっこよさもありつつ、中身もある。そんな高いハードルをみずからに課し、しかし、それを見事に飛び越えてみせたSOULHEADの本作『BRAIDED』。YOSHIKAがビシッと言う。

「かっこいいことは案外簡単で、誰にでもできるんですよ。表面的にも内面的にも、かっこよくみせようとすることはできる。でも、中身の深い部分を表すとか、悲しさや楽しさといった感情を聴き手と連動させるっていうのは難しい。だから、単純にかっこいいアクセサリーみたいなだけじゃダメ。そこもセカンド・ステージのテーマだったんです」(YOSHIKA)。

 和魂洋才――その意味は、日本固有の精神を以て、西洋の学問・知識を学び取ること。日本人であることのアイデンティティーをみずから再認識し、それを洋楽文化から学び取った桁外れに卓越したサウンド・デザイン構築術で昇華させた、この比類なき真の和魂洋才盤。これは、ふたたび、日本産グルーヴ・ミュージックの水準を高めたばかりか、この国の音楽すらもネクスト・ステージへと誘うような快作だ。

▼『BRAIDED』からの先行シングル。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2004年05月07日 17:00

更新: 2004年06月17日 18:23

ソース: 『bounce』 253号(2004/4/25)

文/猪又 孝

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