インタビュー

Converge(2)

音楽性を育む〈ライヴ〉という実験室

 ところで、コンヴァージを語るうえで外せないのがライヴ。これまでに何度か来日しているので、すでにナマで観たという人も多いだろうが、あの極限までアグレッシヴで、かつ均整の取れたパフォーマンスは壮絶……。彼らにとってもライヴとはやはり特別なもののようで、「とてもパワフルな体験。観客と音楽を共有し、観客とエネルギーを交換し合う美しい場面を体験できる場だ」と言う。そして、その〈ライヴ感〉をきちんと捉え、消化したうえで作品作りに反映させていくのが、彼らのやり方だ。今作の制作の合間にはツアーが入っていただけに、作品作りにも良い影響があったとか。

「レコーディングする前に、ライヴで新曲をプレイする機会に恵まれたんだ。2年ぐらい前からライヴでプレイしてきた曲を今回、レコーディングしたり。おかげで曲もこなれてきたし、ヴィジョンがよりハッキリしたんだよね。曲のすべてを知り尽くしてレコーディングすることができた。これは俺たちにとっては珍しいことで。だからこそ、今作は前作以上にライヴ感も増したし、洗練されたものに仕上がったと思うんだ」。

 今年の4月には、〈オール・トゥモローズ・パーティーズ〉に出演した。ハードコア色ゼロのモグワイや竹村延和ら、毛色のまるで違うアーティストたちに混じってのエントリーが話題を呼んだ。

「あれは本当に楽しめたフェスだったね。よく、アグレッシヴなバンドはアグレッシヴな音楽ばかり聴いてると思われがちだけど、そんなことまったくないんだ。そんなことしてたら、頭が狂っちゃうよ。グロウイング、キャット・パワー、モグワイ、ターボネグロなど、意外に思われるかもしれないけど凄く楽しめたよ。そういえば、日本のENVYも凄く良かった。彼らは朝イチだったから、眠い目をこすりながら間に合うように必死に会場に向かったことを覚えてる」。

 いまもっとも激しく攻撃的な音を出すバンドにして、この発言。なかなかおもしろい。この柔軟性こそが、コンヴァージの音楽を深めるキーになっていることは間違いない。そしてもう一つ注目しておきたいのが各々のサイド・ワーク。現在メンバーは、キッド・キロワット、オールド・マン・グルームといったプロジェクトでも精力的に活動を続けている。前者は疾走感のあるエモーショナル・ロック、後者はダークでヘヴィーでグルーム(=沈欝)。それぞれテイストが異なるこれらの活動を、根幹に収束(=Converge)させ、さらに進化/深化し続ける、それがコンヴァージというバンドなのである。そして、ジェイコブはソロ活動を進行中。

「時間が空いたときに作ってるんだ。早く完成させたいけど、忙しくてなかなか時間が割けないんだよね。でも、すでにレコーディング自体は終わっていて、あとはミックスなどをして仕上げるだけ、という段階にまできてる。ミニマルな感じで、アヴァンギャルド、と呼ぶ人もいるかもしれないけど、自分としては感情的で飾りのない感じの音楽だと思ってる。スワンズや初期デペッシュ・モードと比較する人もいるよ(ちなみに、どちらもジェイコブが敬愛するバンド)。そんなにエレクトロニックでもなくて、ギター中心だけど、コンヴァージとは違う世界を描いてるね。でも、コンヴァージのファンにも訴えるようなプロジェクトだと思うよ」。

 コンヴァージのもっともコアな部分を担っていると言ってよいであろうジェイコブ入魂のソロ・プロジェクト。彼の、そして彼らの底知れなさが垣間見える作品になりそうで、とにかく楽しみだ。

 さて、彼らはただいま久々のアメリカ・ツアー中。同郷の朋友であり、サイド・ワークでも親交の深いケイヴ・インとのカップリングである。

「その後、ヨーロッパ、日本、オーストラリアとまた回りたいと思ってる。いまのところ、日本には来年の2月ぐらいに行けそうなんだ。まだ決定じゃないけどね」。

 実現すれば約2年ぶりとなる来日。そこでまた、私たちの期待と想像をはるかに超える境地を見せてくれるに違いない。来るべきその日を待ちわびながら、まずはこの『You Fail Me』の世界に、どっぷり身を浸すことにしよう。

▼コンヴァージの作品を一部紹介。


ライヴの模様を収録したDVD「The Long Road Home」(Deathwish)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2004年10月07日 12:00

更新: 2004年10月14日 17:51

ソース: 『bounce』 258号(2004/9/25)

文/おだ ゆみこ