インタビュー

新作から抽出されるデスチャのエッセンス

【GOSPEL】
  そもそもグループ名を聖書から取った彼女たちだからして、ゴスペルと無関係なはずなどない。歌唱法はもちろんのこと、実際に彼女たちのアルバムにはゴスペル・メドレーなどが挿入され、またライヴでもそれを披露してくれている。さらにミッシェルが2枚のゴスペル・アルバムをリリース済みなのはご承知のとおりだし、ビヨンセも映画「The Fighting Temptations」(2005年2月に日本公開予定)で教会育ち丸出しの歌を豪快に聴かせている。サントラ盤はファンならずとも必聴だ。

さらにもう少し広く見渡してみると、ビヨンセパパことマシュー・ノウルズがプロデューサー・チームのパジャム(最近、中心人物のJ・モスが新作をリリース)と共にラマイヤというゴスペル女性グループをデビューさせ、そこにはソランジュも制作陣として名を連ねていたりも。ゴスペルを聴かずにデスチャは語れませんです。(荘)


J・モスの2004年作『The J Moss Project』(Gospo Centric)


ラマイヤの2004年作『Ramiyah』(Music World Music/Columbia)

【SOUTH】
  テキサス出身のサザン・ガールズであるデスチャ。ビヨンセがリル・フリップと共演していたのも実は自然な流れなのですが、今作では“Soldier”に客演王のT.I.とリル・ウェイン(ニヴェアのオトコ)を起用。そういえば彼女らのデビュー作には地元テキサスの英雄=ゲトー・ボーイズ“Mind Playing Tricks On Me”ネタの曲も収録されてました。(轟)

【SOUL SAMPLES】
  ビヨンセがソロ作で露わにしたオールド・ソウル趣味は、デスチャの新作にも迷いなく反映されている。いや、むしろデビュー作での〈ネタ感〉が戻ったと言うべきか。特に9thワンダーとの共作曲では、彼のメロディアスなセンスもあってか、原曲の旨みを鮮やかに抽出。“Is She The Reason?”ではメルバ・ムーアの78年曲“I Don't Know No One Else To Turn To”を使い、“Girl”ではドラマティックスの77年曲“Ocean Of Thoughts And Dreams”を弾き直して激キャッチーな曲を作り上げている。

また、ロックワイルダーとの共作曲“If”でもナタリー・コールの75年ヒット“Inseparable”から一節を拝借。新機軸を打ち出しつつ、一方でこうしたソウル曲の輪廻転生をひょいとやれてしまう彼女たちは、やはり運命づけられたソウル・チャイルドと言うしかない。(林)

【9TH WONDER】
  比較的オーソドックスな印象が強いデスチャの新作ではありますが、そのオーソドキシーを創出しているひとりが9thワンダーだというトピックにビックリした人も多いはず。そもそもリトル・ブラザーのメンバーとして世に出た彼は、ピート・ロック直系のプロダクションによってインディーの雄としての評価を確固たるものにし、ナズのブート・リミックスやジェイ・Z引退作への大抜擢でブレイク。その後はマースやジーン・グレイなどのプロデュースを手掛けている。ジェイ・Zからの依頼で実現したという今回のデスチャとの合体は彼にとって初の歌モノ仕事でもあり、双方にとって大きなトライだったとも言えるだろう。リトル・ブラザーは2005年にアトランティックからのメジャー・デビューが決定しており、彼がいっそうの躍進を見せていくことは間違いないのだ。(轟)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2004年12月02日 17:00

更新: 2004年12月09日 18:11

ソース: 『bounce』 260号(2004/11/25)

文/轟 ひろみ、荘 治虫、林 剛

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