インタビュー

Seu Jorge

リオの裏路地から登場し、そのカリスマティックな佇まいでセンセーションを巻き起こしたセウ・ジョルジ。俳優としても注目を集める彼の新作に世界が震撼する!!


 セウ・ジョルジ――ブラジル音楽シーンのストリート・サイドを代表するアーティストとして、現在もっとも突出したスター性を持つ人物が彼である。ルーツ・サンバの血をしっかりと受け継ぎながら、さまざまなブラック・ミュージックのフィーリングを併せ持つ音楽性。それだけで十二分にストーリー性を感じさせる、ラフで熱い歌声。一目で観衆をクギ付けにする、強烈なカリスマ性。こうしたスター特有の魅力を発散する彼の活躍によって、音楽大国ブラジルの知られざる側面が、ようやくこの日本でも注目を集めようとしている。

類い希な〈シンガー・アクター〉として

 セウ・ジョルジがわれわれ日本のリスナーの前にはじめてその姿を現したのは、彼が所属していたグループ、ファロファ・カリオカの98年作『Moro No Brasil』(現在入手困難)によってだった。ファンク・バンドの体裁を取りながら、メンバーにカヴァキーニョ奏者やタンタン(パーカッションの一種)のプレイヤーを擁し、あらゆる黒人音楽とサンバのグルーヴが渾然一体となったそのサウンドは耳の早いリスナーの間で大きな話題となり、個性的なフロントマンであったセウ・ジョルジの名前は鮮烈に刻み込まれることになった。以降さまざまな活動を同時進行させていた彼は、2001年にファースト・ソロ・アルバム『Samba Esporte Fino』をリリース。今作はオーソドックスなサンバ作家としての顔と、ジョルジ・ベンを彷彿とさせるサンバ・ソウル風のサウンドが同居した内容で、レア・グルーヴ方面からも注目を集めることになる(後にMr ボンゴから『Carolina』というタイトルでライセンス・リリースされた)。

 この2作品でブラジル音楽ファンからの期待を一手に集めることとなったセウ・ジョルジ。一方ではもともと演劇畑の出身であったこともあって、映画「シティ・オブ・ゴッド」「モロ・ノ・ブラジル」に、前者では俳優として、ドキュメンタリー映画である後者ではミュージシャンのひとりとして出演。映画の世界でも一躍その名を知らしめることになる。リオやブラジル各地の市井の現実と文化にフォーカスして、劇中でもブラジル音楽が大きな存在感を放っていたこの2作品は、彼の地に刺激的なストリート・ミュージック・シーンがあることを国内外の人々に気付かせるのに十分な内容だった。そして、そのスクリーンの中心でスポットライトを浴びていたのが、他ならぬセウ・ジョルジその人だったのである。さらには次回作「ライフ・アクアティック」の日本での公開も決まり、映画方面からもさらに彼の名が浸透しそうな気配なのである。

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掲載: 2005年03月17日 12:00

更新: 2005年03月17日 15:46

ソース: 『bounce』 262号(2005/2/25)

文/成田 佳洋