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インタビュー

フェイスの根幹にあるゴスペル──ますますコンテンポラリーに進化を遂げるその現状とは?

 フェイスを育てたとされる祖父母は彼女にゴスペルばかりを聴かせ、幼いフェイスを教会へと連れて通っていたようだ。そんなわけで、彼女は自然とゴスペルに触れ、教会のクワイアに参加するようになる。学生時代にはジャズやクラシックのクラスを取り、またラップもしていたという彼女だが、一方で20歳を過ぎてもゴスペルを続け、地元ニュージャージー周辺のクワイアにたびたび参加していた。日本でもDVD化されたばかりの映画「ファイティング・テンプテーションズ」に出演した際に与えられた、クワイアに属しながらも世俗音楽(R&B)を歌って教会を追い出されるという役柄は、その顛末はともかく、現実のフェイス自身とダブって映ったものだ。そもそも彼女の名前であり、過去3作のアルバム・タイトルに引っかけていた〈faith〉とは〈信仰〉のこと。フェイスにとってゴスペルは切り離せない存在なのだ。

 そんな彼女が、ゴスペル界における自身のアイドルとして挙げるシンガーとデュエットしたのがカレン・クラーク・シアードの97年作『Finally Karen』収録の“Nothing Without You”。カレンの声、そして歌唱はフェイスに極めて似ており、逆にフェイスがいかにカレンから影響を受けたのかが手に取るようにわかる。最近ではドナルド・ローレンスのソロ名義作『I Speak Life』に収められた“Say A Prayer”で美しい声を響かせていたのも記憶に新しい。

 このように、R&Bフィールド向けのゴスペル作品というものは実は少なくない。たとえば、ロドニー・ジャーキンズが制作参加したキエラ・キキ・シアード(カレンの娘)のデビュー作『I Owe You』も〈ビヨンセの妹〉と言っても通じそうな感じだったし、ミッシェル・ウィリアムズ(デスティニーズ・チャイルド)のソロ作2枚や、ビヨンセ・パパが送り出した女性グループのラマイヤのデビュー作も素晴らしい出来だった。男性陣なら、カレン、キキ、ラマイヤのいずれにも携わっているJモスのソロ最新作や、ゴスペル界のプリンス(王子ではなく、あの殿下のような天才という意味です)と喩えられるトーネイの諸作がお勧め。R&Bからもう一歩踏み出したい人には、ぜひとも手を伸ばしてほしい作品たちだ。
▼R&Bファンにもオススメのゴスペル作品を紹介。


ラマイヤ『Ramiyah』(Music World Music/Columbia)


Jモス『The J Moss Project』(Gospocentric

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2005年03月31日 13:00

更新: 2005年04月07日 20:11

ソース: 『bounce』 263号(2005/3/25)

文/荘 治虫

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