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インタビュー

JAH CURE

投獄中の身でありながら、数々の名曲群でセンセーションを巻き起こしているジャー・キュア。タイミングよく新作を発表した彼の貴重な発言をお届けしよう


〈俺が切望するもの〉――そう切々と歌う“Longing For”は、昨年ジャマイカで大流行し、Irie FMでは今年の年明けの時点でも10分ごとにかかっていた。歌い手はジャー・キュア。今年26歳になる彼は、98年にレイプ容疑および銃の不法所持の廉で逮捕されて以来、一貫して無実を主張しながら15年の刑期を務めている最中だ。事件のあらましや個人的な見解を書くスペースはないけれど、現在、ジャー・キュアがジャマイカでもっとも有望視され、みんながそのステージを観る日を心待ちにしているシンガーであることは間違いない。2000年に出た『Free Jah Cure』からの曲をベースにした『Freedom Blues』がリリースされる彼に、1月3日キングストンの刑務所で10秒ほど面会してきた。同夜、彼が隠し持っている携帯電話を使って行った電話インタヴューからの言葉を紹介しよう。

 まず、“Longing For”は、「昨年、仮出所の嘆願が却下された時に作った」と、いきなり痛い言葉が返ってきた。体裁こそラヴソングだが、彼が切望しているのは〈自由〉だ。「本物の感情が籠もっているから、みんなの心に響いたんだろうね」とも。シングル盤で聴くと微妙に音圧がブレるので、おそらく刑務所に機材を持ち込んで作ったのだろう。今の状況は「制約はあるけれど、一応自分がやりたいことをなんとかできている」とのこと。確かに流行のリディムでシングルを切り、ダブ・プレートの仕事もこなしている。彼は熱心なラスタファリアンで、ラスタの神であるジャー・ラスタファライとその精神を指す〈I & I〉という言葉が何度も口から出てくる。「もうすぐ自由の身になるから、待っていてほしい」と話す根拠も、ジャーがついているから、というのと、彼を釈放せよ、という世論が高まっているという2つがある。事件が起こる前は、シズラやケイプルトンが目をかけていたくらいの才能の持ち主。セカンド・アルバム『Ghetto Life』のエグゼクティヴ・プロデューサーは、彼が「第二の父」と呼ぶベレス・ハモンドだ。そのベレスも、昨年のインタヴューでキュアに関して「そのうちいいニュースが入ってくるはずだ」と前向きなコメントを寄せている。キュア本人の出所後の展望も、極めてポジティヴ。

「ゆくゆくは自分の音楽をメインストリームに持っていって、できるだけ高いレヴェルまでいきたい。俺は、自分を信じている」。

 私も、ジャー・キュアの才能を信じている。Free Jah Cure.

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カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2005年04月07日 13:00

更新: 2005年04月07日 18:07

ソース: 『bounce』 263号(2005/3/25)

文/池城 美菜子