Juvenile(3)
大切なのは音楽と家族だけだ
「全曲が高水準」と胸を張る新作は、プロデューサーには地元の若手を積極的に採用しつつ、仲間のUTPほか、ファット・ジョー、リュダクリス、マイク・ジョーンズ、ポール・ウォール、ブライアン・マックナイト、トレイ・ソングズなど華麗なゲスト陣が脇を固めている。飛び道具的なブライアン・マックナイトの曲は、〈ぴったりの曲がある〉と本人からアプローチされたとか。「普通のラップはしないで、オーディエンスに語りかけるように仕上げた。ブライアンのパートとのやり取りは本物の会話だと思っていい」とジュヴィナイル。バスタ・ライムズやルピーとの共演曲は収録できなかったそうだし、クール&ドレーがプロデュースしたファースト・シングル“Rodeo”には、サンプリング・ネタである“Bump 'N Grind”の本家=R・ケリーによるリミックスを用意しているらしい。なかなかどうして、業界内でも信頼が厚い模様。
これほどの昇り調子にいても、ジュヴィナイルは「自分にとって大切なのは音楽と家族だけ」と言い切る。「MCの役割は、マイクを握った以上、確実に盛り上げること」とも。そして「ラップなんて誰でもできるし、その気になれば何でも言える。でも、生活に密着した事実、リアリティーをラップするのは難しいんだよ」と明かす。出てきた時から、生まれ育ったプロジェクトの様子や地元の人々をフィーチャーしたプロモ・クリップを作ってきた。“Rodeo”のクリップもひと味違う。「ストリップ・クラブの女性が脱いで腰を振って、みたいなありがちなストーリーじゃなくて、その裏の現実的な生活、シングル・マザーだったり、学校に行ったりというシチュエーションまで見せたから、反響はスゴイね」と胸を張る。「自分の生活に近い音楽を作りたい。俺が作る曲の根底にあるのは〈リアリティー〉だ」とも。ジュヴィナイル物語第2章を飾るのが『Reality Check』。さまざまなドラマを乗り越えたこの顔つきにどこか自分が重なるのなら、もしくは片鱗にあやかりたいのなら、必ずチェックすべし。……さて、自分のリアリティーをチェックして本稿を締めよう。いまのジュヴィナイルの顔つきは、元カレの20倍はカッコイイっす、ハイ。
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カテゴリ : インタビューファイル
掲載: 2006年04月20日 17:00
更新: 2006年04月27日 19:46
ソース: 『bounce』 274号(2006/3/25)
文/池城 美菜子