インタビュー

T.I.(2)

悪い気はしないね

 先行シングル“What You Know”は、T.I.自身が「オレがスヌープだとしたら、彼はドクター・ドレーさ」とその関係を説明するDJトゥーンプのプロデュース曲。現在USのラジオだと1時間に1回はプレイされていて、新たなストリート・アンセムとなりつつある。フィーチャーするプロデューサーやアーティストの基準について訊いてみた。

「まず、向かっている方向がオレとまったく同じヤツか、逆に正反対に行っているヤツか、ということで決めてる。コモンともやったんだけど、これは後者の例。トラヴィス・バーカー(ブリンク・182/トランスプランツ)にドラムを演奏してもらった曲では、いままで縁のなかったロックの境地を開拓できた。一方で、ヤング・バックやBG、ヤング・ジーズィとの曲はオレがいままでやってきた方向とまったく同じものだ。そうした観点で曲を作る相手を決めてるね」。

 ジャスト・ブレイズなどの名前も見られるが、基本は比較的無名なケイオら身内のプロデューサーが起用されている。

 「彼らはオレのレーベル、グランド・ハッスル所属。ただ、自分のアルバムすべてのプロダクションをグランド・ハッスル内で手掛けるというのは考えてないね。オレがいっしょに仕事したいプロデューサーは他にもたくさんいるから。現時点でグランド・ハッスル内のプロデューサーが多いのは、単に予算の関係もある。オレはアーティストでありながらグランド・ハッスルの社長でもあるし、原盤を半分所有しているから、金を湯水のように使うことはしたくないんだ」。

 そのようにビジネスマンである一面も見せる彼。さらに“Undertaker”にフィーチャーされているヤング・ドローと、“Hello”で歌っているガヴァナーの2人もグランド・ハッスルの所属アーティストだそうで、社長であるみずからベタ褒めだ。

「ヤング・ドローはオレの次にリリカルでカリスマ性のあるラッパーだと断言する。彼を見い出せて本当に良かったよ。ガヴァナーはとてもソウルフルで才能があって素晴らしい曲を書く。彼はこれからの音楽の歴史に残るアーティストになると思うから、自分が関わることができて逆に光栄なくらいだ」。

 さらにはUGK“Front, Back And Side To Side”のリメイク曲もあり、そこには刑務所から出てきたばかりのピンプCも含むUGKの2人も登場。スリム・サグやマイク・ジョーンズも手掛けるドクター・ティースの監督でプロモ・クリップも撮ったとのことだ。

「オレはUGKの大ファンだから、本人たちとこの曲をやろうと思った。クリップはヒューストンの第3区っていう凄いゲットー地域で撮ったんだけど、UGKの2人の他にもスリム・サグとかBGとか、近所の住民もたくさん押しかけてきてくれて。凄く楽しかったよ」。

 また、オスカー俳優にして自身のアルバムも好調、いまが旬なジェイミー・フォックスの参加については「よく彼を見かけて、言葉を交わした時に今度ぜひいっしょに曲をやろうって話してたんだけど、彼にトラックを送ったら、次の日にすぐレコーディングしたものを送り返してきてくれたよ」と、こともなげに語る。

 バウ・ワウなど他アーティストにゴースト・ライティングをしているという噂に関しては「実際かなりの数のラッパーにリリックを書いたよ。誰かは言えないけどね!」とのこと。これも〈キング・オブ・リリックス〉ならではか。最後に、〈サウスのキング〉とか〈サウスのジェイ・Z〉と呼ばれることをどう思ってる?

「『Urban Legend』の頃から〈キング〉って呼ばれてる。〈サウスのジェイ・Z〉って呼び名に関しては……まあ、悪い気はしないね。ジェイ・Zがどう思ってるか訊いといてくれよ(笑)!」。

▼『King』に参加したアーティストの作品を一部紹介。

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掲載: 2006年05月04日 19:00

更新: 2006年05月11日 19:25

ソース: 『bounce』 275号(2006/4/25)

文/サリー 森田