インタビュー

力強い作品と共に歩んできたミナミの帝王、T.I.の堂々たるキングス・ロード

T.I. 『I'm Serious』 Ghet-O-Vision/LaFace/Arista(2001)
商業的には不振だったファースト・アルバム。DJトゥーンプを中心に据えた楽曲は、突出して耳を捕えるトラックは少ないものの、そのことが逆にラッパーとしてのT.I.の実力を際立たせている。リラックスした環境下で制作したことを窺わせつつ、タイトに踏むライムと自在なフロウで潜在能力の高さを証明した、再評価されるべき充実作。

T.I. 『Trap Muzik』 Grand Hustle/Atlantic(2003)
レーベルを移籍し、大躍進が始まったのは本作から。地元制作陣を採用しながら駆け上がったことは、〈作られたスター〉ではなく、〈なるべくしてなったスター〉であることを証明した。前作からスケールアップしたトラックとT.I.のポテンシャルが融合し、名実共に〈キング〉であることを世に認めさせた文句なしの出世作であろう。

T.I. 『Urban Legend』 Grand Hustle/Atlantic(2004)
ラン・DMCを引用した幕開けから高らかに〈南部のキング〉を宣言した本作は、大物のオーラを纏った揺るぎなきスターのアルバム。スウィズ・ビーツやリル・ジョンら参加メンツもそれまで以上に豪華だが、臆することなく縦横無尽にマイペースなラップを披露する余裕の態度には、完全に時代を手に入れた男ならではの風格が漂う。

HUSTLE & FLOW 『Soundtrack』 Grand Hustle/Atlantic(2005)
ジョン・シングルトンが監督したヒップホップ映画のサントラ。南部が舞台ということで、人気のスリー6マフィアらサウス勢がズラリと並ぶなか、T.I.はPSC名義の“I'm A King”“Murder Game”で登場。並みいる大物たちのなかでも突出した存在感を放つT.I.が、本作の冒頭で〈I'm A King〉と豪語することに異を唱える者はいないだろう。

THE PSC 『25 To Life』 Grand Hustle/Atlantic(2005)
『I'm Serious』から参加しているPSCは、T.I.もメンバーとして所属するクルー。集団MCにありがちな勢いやパーティーのノリ一辺倒で押し切るのではなく、個々のマイクにスポットを当てることでストリート寄りの硬派なスタンスをアピールした今作。浮わついたところのない均整の取れた一体感が彼らのさらなる活躍を期待させる。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2006年05月04日 19:00

更新: 2006年05月11日 19:25

ソース: 『bounce』 275号(2006/4/25)

文/高橋 荒太郎

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