インタビュー

『Idlewild』のエッセンスを分析!!

 アウトキャストが今回披露したのは、30年代にまで遡った連綿たる黒人音楽のタペストリー。そこに織り込まれているのは……まず、洒脱でスウィンギーなジャイヴ(P49までジャンプ!)のノリ。20年代から活躍するハーフ・パイント・ジャクソンやキャブ・キャロウェイ、スリム・ゲイラード、ルイ・ジョーダンといった、〈アーティスト〉じゃなくて尊敬と共に〈芸人〉と呼びたい面々は外せない。そのノリを50~60~70年代にかけてロックンロール~ソウル~ファンクへと橋渡ししたハイパー芸人=ルーファス・トーマスあたりから辿っていくのもわかりやすいだろう。また、“Morris Brown”で用いたマーチング・バンド・サウンドは、映画「ドラムライン」(アウトキャストと同じアトランタで育ったダラス・オースティンの実体験を元にした作品だ)やデスチャ“Lose My Breath”でお馴染みになったあの跳ねまくるグルーヴの転用となる。さらに毎度のPファンク趣味だが、ファンカデリック“Into You”さながらの“N2U”があれば、エディ・ヘイゼル直系の哀愁垂れ流しギター・ジャム“A Bad Note”があったり、今回はかなり直球! で、アンドレのプリンス・モードも継続中で、今回は音楽/映画共に「パープルレイン」なのだそう。かように、30年代の焼き直しではなく、そこから現代に至るまでの多様な黒人音楽を巧みに連環させている点が彼らならではなのだ。


スリム・ゲイラードの編集盤『1947-1951』(Classics)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2006年09月14日 23:00

更新: 2006年09月28日 22:38

ソース: 『bounce』 279号(2006/8/25)

文/出嶌 孝次

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