Kasabian
〈2枚目のジンクス〉を打ち砕いて、UKシーンに揺るぎない〈帝国〉を築き上げた 2枚目な男たち。強靱なグルーヴと壮大なメロディーに、世界はふたたび乱舞する!
暴走電車のようだろ?
カサビアンの急成長ぶりを、どういう言葉で表せばもっとも的確なのか。とりあえず、デビュー作『Test Transmission』ではアイデアを思いつく限り実践していって、その結果、エネルギーだけは伝わるけれど音としてはどこかちぐはぐなものが残っていた、としよう。そうすると、セカンド・アルバム『Empire』では〈思いつく限りのアイデア〉と〈エネルギー〉はそのままに、しかし音楽の総合体としては幼稚園児がいきなり大学生になったかのような、感覚ではなくインテリジェンスとして音を鳴らすためのヴォキャブラリーを獲得した、と言える。
デビューから2年の間に食って吸って踊るだけのレスター出身の悪ガキどもが、大学に通って知性を獲得していたとか? いやいや、彼らがこの2年の間にひたすら励んだのはライヴ活動。その過程で、例えばデビュー当時にはドラマーのいないバンドだったにも関わらず(これだけグルーヴを重視するバンドなのに初期メンバーにドラムス不在というあたりが、デビュー当時の彼らの感覚一発勝負師っぷりを象徴しているが)、イアン・マシューズ(ドラムス)がツアー・メンバーとして参加し、のちに正式加入。また、実際にライヴを重ねることで、ファンをライヴだけで昂揚させるのではなく、音源そのものでいかに盛り上げ、いかに踊らせるか――その重要性を痛感したとも言えそうだ。
「イアンが加わったことが、前作との最大の違いじゃないかな。うん、それがいちばん大きく変わった点だ。彼の存在が必要だったんだよ。なにしろ、以前は(音を他から)盗むしかなかった。でも今はその必要がなくなった。それが(音楽に)エネルギーと命を吹き込んだね。そこからサウンドも変わった。単なるドラム・ループを使っているわけじゃないからさ、暴走電車のようなフィーリングが出ているだろ?」(サージ・ピッツォーノ 、ギター)。
「ライヴ感が出てるよな、サージ! ループじゃないから、オレも歌っていると共に響き合っているような気持ちになれる」(トム・ミーガン、ヴォーカル)。
「そういうのがあるからこそ、俺たちは一般的なロックンロール・バンドとは一味違うんだよ」(サージ)。
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