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インタビュー

Akon

ゲットーの片隅から、闇の奥底から、遙か彼方の大地から、あの枯れ寂びた旋律がまた響いてきた。苦しみと哀しみ、そして慈しみで満たされたエイコンの歌を聴け!

自信が持てるようになった


「ニュー・アルバムのコンセプトは『Trouble』よりもさらに人々を混乱させること(笑)。〈あいつはラッパーだ〉とか〈いや、R&Bシンガーだ〉〈違う、レゲエだ〉とかいろいろな意見が飛び交ってただろ?

 今回のアルバムではさらにみんなを煙に巻いてやるんだ(笑)」。

 この男のCDをR&Bのコーナーに収めるのには、どうも違和感を覚える。とはいえ、ヒップホップの棚に置くのにも抵抗を感じるし、もちろんレゲエの枠に入れてしまうのもちょっと違うような気がする。本人のコメントにもあるように、そのあまりにオリジナルなスタイルはどこか特定のジャンルに押し込むのをためらわせるぐらいだけれど、ただひとつ確かなのは、憂いと痛みを帯びた彼のヴォーカルはいま全米のラッパーたちからもっとも求められている声である、ということだ――全世界で約400万枚を売り上げたファースト・アルバム『Trouble』から2年半、エイコンが新作『Konvicted』を完成させた。

「『Trouble』が受け入れられたことで自信が持てるようになったし、もっとクリエイティヴになってもいいんだって思えるようになった。普通は前の作品より良いものが作れるか不安になったりするのかもしれないけど、俺に関しては全然平気だよ。すでにたくさんのファンがいることを実感したし、どう転んだって『Trouble』より良い作品になるっていう自信があったからね」。

 新作に寄せる、自信と確信に満ちたエイコンの語り口。これは“Locked Up”や“Lonely”といった全米TOP10ヒットを輩出した『Trouble』の成功はもちろん、昨年から今年にかけてヒップホップを中心に実に70曲もの客演(その内訳は全米4位にランクインしたヤング・ジーズィの“Soul Survivor”からDREAMS COME TRUEのリミックスにまで及ぶ)をこなしてきたことによる部分も大きいのだろう。

「この1年でかなりの量の客演をやってるね。たぶん俺はトラックとメロディーを作れてなおかつ歌もできるから頼みやすいんだろうな。いまじゃコラボをやりすぎて巷には俺の曲が溢れてる。最近ではオファーを断ってるぐらいだよ(笑)」。

 それら客演曲のイントロで確認することができるとおり、エイコンが手掛けた曲には自身が主宰するレーベル=コンヴィクトのマーキング的な役割を果たす〈Konvict, konvict, konvict...〉というフレーズ(と鉄格子の閉まる効果音)が挿入されていて、〈コンヴィクト〉はいまやすっかりエイコンの代名詞として定着した感がある。今回のニュー・アルバムではさらにそれを念押しするように『Konvicted』なるタイトルが冠せられているが、この執拗なまでのこだわりは、窃盗罪で1年半の懲役刑を受けた過去を持つ彼の実体験に基づいたものだ。

「〈コンヴィクト〉は〈有罪〉って意味だけど、あくまで俺なりの解釈の〈有罪〉なんだ。監獄での生活はもちろん俺の人生観に強い影響を及ぼしてるよ。服役中は曲ばかり書いていたし、そこから痛みがきてるわけだし……俺の曲のダークな部分はみんなそこからきてる。新作からのリード・シングル“Smack That”は晴れて自由になったことを表現していて、曲調が前よりも明るくなってきたけど、刑務所生活の体験はこれからも俺の音楽観に影響を与え続けることになると思うよ」。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2006年12月14日 21:00

更新: 2006年12月21日 23:25

ソース: 『bounce』 282号(2006/11/25)

文/高橋 芳朗