インタビュー

Young Jeezy

列強が熱い闘いを繰り広げた2006年のヒップホップ・ゲームに、アトランタ最強の男がようやくエントリー! いちばんのご馳走は最後に登場するもんだぜ!

サヴァイヴするために


 「あの作品のミッションは扉を開くことだったんだ。完璧にやり遂げられたと思ってるぜ」。

 メジャー・デビュー・アルバム『Let's Get It:Thug Motivation 101』についてこのように振り返るヤング・ジーズィ。同作の直前にはアトランタのサグを集めて作られたグループ=ボーイズン・ダ・フッドとしてのデビューも済ませていたのだが、迫力満点のザラザラな低温ヴォイスに、悠々とした大物感たっぷりのフロウ、そして随所に挿入される〈ジェェェェア〉〈エ~イ〉といった(文字にすると格好悪いが)格好良すぎるアドリブ……とにかくラフでロウなパフォーマンスのすべてが、新時代のサグ・ラッパー像を窺わせるものだったのだ。

 77年生まれの彼はドラッグ・ディーラーとして生活を送りながら、インディー・ベースで2枚のアルバムをリリースしてきた。そのうち2003年の『Come Shop With Me』が地元アトランタでローカル・ヒットを記録したことでジャジー・フェイ主宰のショー・ナフにフックアップされ、デフ・ジャムとの契約に至っている。グッチ・メイン“Icy”などの客演曲で話題を撒いた後に登場した件の『Let's Get It:Thug Motivation 101』は、実に200万枚のセールスを叩き出し、全米チャート4位まで上昇した“Soul Survivor”を筆頭にシングルも軒並みヒットを記録。が、彼がそこに注入したあまりにも生々しいストリート・メンタリティーは必ずしも賞賛されたわけではない。

「現実はクレイジーなんだ。ドラッグ・ゲームが存在しなかったら、俺には食いぶちを稼ぐこともできなかったんだから。俺はサヴァイヴするためにやってきたんだ。いまも俺はストリートにいて、そこでの話し方や体験を表現するのが自然なことだと思ってる。もしストリートの作法が理解できなくても、〈イイ音楽だな〉って聴いてもらうこともできるだろう。俺もジャマイカの音楽を聴いて、意味がわからないけど好きになったりすることはあるぜ。ただ、リスナーがストリートのことを知らなくてもいいとは思わない。ほんの少しでもいいから現実を理解させたいんだ」。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2007年02月08日 18:00

ソース: 『bounce』 283号(2006/12/25)

文/出嶌 孝次