インタビュー

Young Jeezy(2)

努力すれば報われるんだ

 そうした葛藤から生まれてくるラップが、成功を手に入れたいまでも凄みを失わないのは当然かもしれない。かくして届けられたのは、破壊力抜群のニュー・アルバム『The Inspiration』だ。本人も「俺はワーカホリックなのさ。トラブルから自分を遠ざける意味でも働くのは大好きだね」と明かすように、実に100曲以上ものレコーディングを経て絞り込まれた14曲が装填されている。プロデュース陣は、ショーティ・レッドやミッドナイト・ブラック、ドン・キャノン、ドラマー・ボーイといった前作同様のロウな顔ぶれに加え、先行シングル“I Luv It”を手掛けたDJトゥーンプ(T.I.の片腕でもある)、リック・ロス仕事で名を上げたランナーズなどが参加。逆にゲストは絞り込まれており、好敵手のT.I.や、“Go Getta”で歌うR・ケリー、そしてキーシャ・コールを除いては舎弟のスリック・プラーとブラッド・ロウが登場する程度だ。いまやデフ・ジャムを代表する存在に育ったとはいえ、大物のレーベルメイトを動員するような安易な作りにはなっていない。

「成長ってのは、セルアウトした曲をやらないで、より良いものを作るってことだろ。自分が何者なのかを見失ったら、それは魂を売り渡すようなモンだ。そんなのクソだろ。もし1,000万枚売らなきゃいけない状況であっても、魂を売ったりはしないね」。

 文字どおり〈Trap Or Die〉な状況をくぐり抜けてきたトラップ・スターの言葉は力強い。この気概が保たれる限り、ジーズィはヒップホップ・ゲームでもサヴァイヴしていくに違いない。

「信念を持って努力すれば報われる。俺だってここまで這い上がることができたんだぜ」。
▼『The Inspiration』に参加したアーティストの作品を一部紹介。

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掲載: 2007年02月08日 18:00

ソース: 『bounce』 283号(2006/12/25)

文/出嶌 孝次