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インタビュー

最後の最後まで気が抜けないヒップホップ・ゲームの2006年! 年末に飛び込んできたマストな作品を駆け足で紹介するぜ!!


NAS
  ジェイ・Zとの和解、デフ・ジャムとの契約、そしてケリスとの結婚……と、公私共に大きな環境の変化を経験したナズ。そうした状況下で登場したのが、2年ぶりの新作『Hip Hop Is Dead』だ。自身とLA・リード(ジェイ・Zではない)が総監修を務めただけあって、盟友のL.E.S.やここ数作で好相性を見せているサラーム・レミといった基本的な制作体制は以前のままだ。スコット・ストーチがドクター・ドレー+DJプレミア的なマナーで挑む“Carry On Tradition”や、「ゴッドファーザー・パートIII」の劇伴をドラマティックにループした“Black Republican”でのジェイ・Zとの絡みもカッコイイが、本人的にはJBの定番ネタを用いてヒップホップ史上の人名だけを延々ライムする“Where Are They Now”、インクレディブル・ボンゴ・バンド使いの意味深な表題曲などストリクトリーな流れに力点を置いているようだ。結果としてヒリヒリするような路上感は満開。今回もナズらしさを押し通した傑作だ!(出嶌孝次)


LIL'SCRAPPY
  50セント率いるGユニットとの急接近が噂されていたリル・スクラッピーのファースト・アルバム『Bred 2 Die Born 2 Live』は、リル・ジョンと50セントの2人がエグゼクティヴ・プロデューサーとして名を連ねるボムとなった。そこからヤング・バックとの共演曲“Money In The Bank”がすでに話題だが、スクラッピーはポッと出の新人ではないのでご注意を。リル・ジョンに見い出されて2003年に“Head Bussa”、2004年にはトリルヴィルとのスプリット・アルバムから“No Problem”をヒットさせ、お祭り的なクランクとは別タイプの曲もこなせるストリート色の強い本格派ラッパーとして存在感を示していた逸材なのだ。T.I.やPSC、クライム・モブ、そしてヤング・ジーズィら同郷の大物と共演し、満を持してリリースした今作でもストリート色の強いハードなフロウが爆発! 彼の台頭でますますATLは激戦区になってきたね!(高橋荒太郎)


PROJECT PAT
  ジューシーJの弟であり、正式メンバーではないもののスリー6マフィアの準構成員的立場にあるプロジェクト・パット。99年に『Ghetty Green』でデビューを果たして以降、ミックス物を除いておよそ4年ぶり5枚目となるニュー・アルバム『Crook By Da Book : The Fed Story』がついにリリースされた。巨体に似合わず小回りの利いたグルーヴィーなフロウは健在で、ゲストもヤング・ジーズィ、ピンプ・Cなど、〈わかっている〉人選もさらなる興奮を喚起するものだ。プロデュースはもちろん全曲DJポール&ジューシーJで、またしてもお得意のウィリー・ハッチ使いがあったり、新旧のマフィア・スタイルを幅広く網羅したトラックでパットのフロウもグルーヴィン! 話題をさらったマフィア・ファミリーの2006年を締め括る意味でも、忘れずにチェックしてほしいところだ。(高橋荒太郎)


GHOSTFACE KILLAH
  開き直ったやりたい放題ぶりが吉と出たドス黒い傑作『Fishscale』を春に投下したゴーストフェイス・キラーが、好調ムードのなかでリリースした2006年2枚目のアルバム『More Fish』。表題どおり前作の続編にあたる内容で、我流を貫いたソウルフルな作りも同様。何せド頭からエリックB&ラキム“Juice(Know The Ledge)”をベタ敷きした超ファスト・ラップですよ! マッドリブがコクたっぷりに仕上げた“Block Rock”や、ソウル趣味が狂い咲いた“Good”など粗削りな男泣きの逸曲が並び、トライフやショーン・ウィッグスといった舎弟名義の曲や、ゴーストが客演したエイミー・ワインハウスのブルージー曲、ニーヨとのヒット“Back Like That”のリミックスなども盛り込んだコンピ的な作りも楽しい怪盤なのだ。なお、本作にも参加したMFドゥームとのタッグ盤も年明け早々に登場するという……。(出嶌孝次)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2007年02月08日 18:00

ソース: 『bounce』 283号(2006/12/25)

文/出嶌 孝次、高橋 荒太郎

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