インタビュー

Fall Out Boy

前作までのステップはあくまで序章にすぎなかった。タフなバンド・サウンドと耳馴染みの良いアレンジ、そして胸を衝くピュアなメロディーと共に、いまフォール・アウト・ボーイはロック界のてっぺんに登り詰める!

最高の気分さ!!


2005年に『From Under The Cork Tree』でメジャー・デビューを飾ったフォール・アウト・ボーイにとって、この2年間はまさに〈激動の〉という言葉が相応しいものだった。そもそも彼らは2001年に結成されたいちポップ・パンク/エモ・バンド。しかし、〈ポスト・ジミー・イート・ワールドの最右翼〉と大歓迎されたファースト・アルバム『Take This To Your Grave』の成功をきっかけに、シーンの最前線に躍り出た彼らの人気は、『From Under The Cork Tree』から生まれた“Dance, Dance”と“Sugar, We're Goin' Down”の2曲のTOP10ヒットで一気に加速。全米チャート9位に食い込んだ同アルバムは、本国だけで300万枚を超える大ヒットを達成した。そして、全米アリーナ・ツアーに挑んだ2006年には、イギリスおよびヨーロッパでもブレイクを成し遂げ、このシカゴ郊外出身の4人組はついにポップ・パンク/エモ・シーンのヒーローに止まらない、現代のロック界を代表する存在にまで成長したのだった。

 そんな彼らがメジャー2発目となるニュー・アルバム『Infinity On High』をリリースした。今作は、前作でメンバーと共に新しいメインストリームのロック・サウンドを作り上げたニール・アヴロンに加えて、なんとあのベイビーフェイスもプロデューサーとして参加。そうした話題性も含め、2007年を代表する作品として後々まで記憶されることは間違いない傑作である。

「最高の気分さ!」とパトリック・スタンプ(ヴォーカル/ギター:以下同)も新作を完成させた喜びを隠さない。

「いまできることはすべてやったという思いでいっぱいなんだ。これまでのアルバムの中でもいちばん好きな作品だね。後はみんなの反応だよなぁ。どう感じてくれるんだろう? すごく気になるよ(笑)。気に入ってくれるといいんだけど。でも、何はさておき、これは自分たちのために作った作品なんだ。つまり〈自分たちが繰り返し聴きたいと思う作品〉にしたかったのさ」。

 ジェイ・Zのラップをフィーチャーすると共にパトリックがみずからを鼓舞するように朗々と歌い上げる“Thriller”以下、全14曲(日本盤にはさらに2曲のボーナス・トラックをプラス)は、パンクだとかエモだとかロックだとか、そういう細かい括りを越えたところで、彼らなりに新しい時代に相応しいポップス作りに挑んだ冒険の数々と言ってもいいだろう。

「とにかく今回は〈いい曲を作ろう〉と、そればかり考えながら取り組んだよ。あたりまえのことだけど、前作や前々作の繰り返しはできない。だっていまの自分たちを表現したものでなければ、いい音楽とは言えないからね。過去のものを引きずり出しても、まるで意味はない。そんなのは自分たちにウソをついているようなものさ」。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2007年03月01日 18:00

更新: 2007年03月01日 18:01

ソース: 『bounce』 284号(2007/2/25)

文/山口 智男