インタビュー

O.N.Oのトラックと並べて楽しみたい世界の〈音響〉あれこれ

 近年のO.N.Oサウンドの変遷について、テクノやエレクトロニカを通過し電子音を前傾に配した手法が云々……なんて話をしたいわけじゃない。彼はこの10年で起きたデジタル録音規格の高解像度化の波を受けつつ、緻密な空間演出による〈モダンな空気感とグルーヴの表出〉を独自のやり方で行ってきたのである(とあえて断言!)。

 そういう意味で、常々フロアでは「自分のトラックも含めて、曲よりも音の響きを意識している」という彼のトラックが今回の『LIFE STORY』で獲得した空気感は、デトロイト・テクノ界の〈MR.C2C4〉ことカール・クレイグの狂気とも共鳴するし、フランソワKの新ダブ解釈パーティー〈Deep Space〉門下生であるビート・ファーマシーの空間演出と照らしてみても楽しいはず。またビートダウン~ディスコ・ダブ以降の耳には、空間魔術師マット・エドワーズのレイキッド名義での音像と共振するものを〈効き〉取れるかもしれない(『LIFE STORY』中盤以降の哀愁感には、ボーズ・オブ・カナダに通じるハーモニー愛も)。さらに蛇足ながら、多様な音を吸収した〈北のBボーイ〉の年輪の重ね方として、THA BLUE HERB周辺のサウンド変遷には、マッシヴ・アタックに相通ずるものを感じたりもするのだが……どうでしょう?

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2007年05月31日 12:00

更新: 2007年05月31日 17:21

ソース: 『bounce』 287号(2007/5/25)

文/RAW 原田

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