The Orb(2)
初期のオーブに通じるサウンド
さて、新作『The Dream』にはビッグ・トピックがついて回ることになった。それは今作が、アンビエント・テクノの傑作『U.F.Orb』以来、約15年ぶりにオリジナル・メンバーであるユース(彼の経歴は別掲コラムを参照)が復帰した作品となるからだ。ユース復帰の経緯を問うと、アレックスは懐かしそうに彼との出会いを振り返りはじめる。
「学生時代にユースと〈誰がスーパートランプの“Crime Of The Century”のレコードを買ったのか〉と口喧嘩したことを思い出したよ(笑)。それって74年の話だから、僕らがどれほど長く付き合っているかわかるだろう? それからさまざまなことがあったけど、彼とはいまでも友達で、またいっしょにアルバムの制作を開始することになった。きっかけは彼のスタジオに行ってエンジニアと仕事をさせてもらったら、凄く良いものが出来て嬉しい驚きがあったからなんだ。新作の『The Dream』は僕とユースの40年の歴史のなかの一枚なんだよ」。
アレックスも「オーブの最初の2作に似たような作品だとよく言われるんだ」と話すとおり、新作『The Dream』は、オーブの傑作にしてアンビエント・テクノの歴史的名盤とも言われている『The Orb's Adventures Beyond The Ultraworld』と『U.F.Orb』を彷彿とさせるレゲエ/ダブのスモーキーなグルーヴとアンビエント・ミュージックのパイオニアらしい美しいメロディーで構成された、実に官能的な作品に仕上がっている。例えば、オーブ史上もっとも美しいナンバーと言える“The Dream”、ファンキーなリズムが身体を芯から揺さぶる“Vuja De”や“DDD/DDD”。そのなかでも“The Truth Is...”にはプライマル・スクリーム“Higher Than The Sun”などを想起させる〈セカンド・サマー・オブ・ラヴ〉末期のとろけるようなグルーヴが立ちこめており、当時を知る方はたまらない感覚に襲われるに違いない。ユースとの邂逅と、過去の名作と今作、その関係性を訊ねると、アレックスは次のように答えてくれた。
「今作は片面がダンスで、もう片面がアンビエントだったファースト・アルバムが青写真になっているんだ。70分ちょっとの長さで、ダンスっぽいものからアンビエントな曲に移っていく。このアルバムは寝る前に聴くような作品ではないけれど、トーマス(・フェルマン)とは近い将来にアンビエント・レコードを作るつもりでいるんだ」。
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