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インタビュー

チャットモンチー

なぜ、こんなにも心惹かれるのか?――その華奢な姿からは想像できないほどの〈生命力〉に溢れる新作を放った注目度No.1ガールズ・バンドの魅力に迫る!

まずは歌詞ありき


 デビューから2年、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いで人気急上昇のチャットモンチーがセカンド・アルバム『生命力』を完成させた。四国は徳島から登場した一見フツーの女子3人による話題沸騰中のこのバンドは、眩い輝きと共に人を惹きつけて止まないフレッシュな魅力を放っている。そのひとつひとつに迫ってみよう。

「〈3ピースのバンドでライヴがカッコいい〉っていうのがめざすものでした」(橋本絵莉子、ヴォーカル/ギター)と結成当初の目標を語るように、チャットモンチーは積極的なライヴ活動によって実力を上げていくと同時に、その人気も上げてきた現場叩き上げのライヴ・バンドだ。だが、チャットモンチーの魅力はその力強く感動的なライヴだけではない。例えば、“シャングリラ”での不器用さやケータイでのコミュニケーションの希薄さなどを嘆きつつ、不安のなかでも〈希望の光なんてなくったっていいじゃないか〉と言い放ち、胸を張って前を見て歩く強さや、世界や社会、人間関係の破綻から生じる空虚感を描く“世界が終わる夜に”、どうしようもない日常へのフラストレーションを暴く“女子たちに明日はない”など、今作に収録されたシングル曲にも見られる、強さも弱さも正直に曝け出したリアリティーのある鋭い歌詞がリスナーの心を突き刺す。情景や心象風景を見事に描き出すそんな歌詞のクォリティーが、昨今のロック・バンドのなかでも群を抜いて高いところも彼女らが大きな共感を呼ぶ理由だといえるだろう。

「歌詞はどんどん出てきます。東京に来ていろんな刺激があって、いろんな歌詞を書けるようになったと思います」(高橋久美子、ドラムス)。

「書きたいことは上京してから増えて、情報が目からも耳からもいっぱい入ってくるので、逆に言葉を選ぶのが大変になりました」(福岡晃子、ベース)。

「みんな書くのが好きだから、書いたらえっちゃんに渡すって感じで。ツアー中でもホテルで書いて渡したりとか、日常的に行われることです」(高橋)。

 そんな3人が書き上げた詞のすべてにメロディーを付けるのは橋本だ。

「メロディーラインを考えるヒントがそこに全部詰まっていて……雰囲気だったり、文字数だったり、サビの位置だったり。曲を作る全部が入ってるものなので」(橋本)。

「でも曲をこういうふうに付けて、とかは言わないようにしています。だからバラードになるだろうなって思ってたやつがすっごい速い曲になったりして。最初はビックリしてたんですけど、いまはその意外性が楽しくって、それがチャットモンチーの持ち味になっていると思います」(高橋)。

 まずは歌詞ありき、そこからメロディーが生まれる――現在では決して主流とはいえない手法をチャットモンチーは徹底しているのだった。

「例えば(歌詞で)BなしでA→A→サビってしたら、やっぱりそのとおり(メロディーを)付けてきてくれたりとか、そういうのもあります」(高橋)。

 な~るほど。チャットモンチーの曲はユニークな構成のものが多い。その構成具合も曲によってさまざまだし、メロディー展開もユニークなものが多いので思わず耳を奪われてしまうのだ。個性的ながらもキャッチーでポップなメロディーや、それと分かち難く結びついた言葉たちがハッキリと耳に飛び込んでくるという彼女たちの音楽の圧倒的な強みの秘密を解明できた気がする。

「メロディーを歌って、そこに2人に入ってきてもらったり、久美子に叩きたいフレーズを叩いてもらって、それに乗せたり。私がゆっくりで想定して作った曲でも、久美子が速いのを叩いたらそれに合わせてみる。そうやって意外なところをいっぱい出して自由に作っていくので、アレンジで曲がものすごく変わります」(橋本)。

 遊び(手数)の多いドラムに、変わったラインを描くベース、アウト・オブ・キーすれすれを行き来するギター・フレーズなど、この3人が出す音は本質的な意味においてオルタナティヴな感性からくるもので、自由さと開放感がそれぞれのプレイに溢れている。

「プレイヤーとして集まったバンドじゃなくて、ライヴを観て〈カッコいいな、自分もステージに出たいな〉って思ってバンドしたいっていう人が集まってるから、テクとか別によくて、いい曲作れたらいいなっていう感じなんですよね」(福岡)。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2007年11月01日 21:00

ソース: 『bounce』 292号(2007/10/25)

文/ダイサク・ジョビン