インタビュー

Wyclef Jean

幾多の辛苦を乗り越えて完全復活! 色とりどりのワールド・ビートが賑やかに入り乱れる、ポジティヴでエクレクティックなカーニヴァルの幕開けだ!! 

あの時と同じだと思った


  ワイクリフ・ジョンがアルバム『The Carnival』でソロ・デビューしてからの10年を振り返ると、その前半と後半は対照的だと言えるのかもしれない。最初の5年間は同作品に寄せられた賛辞とフージーズ人気の追い風を受け、プロデューサーとして大活躍。しかしその後は、父の事故死、フージーズ再結成の失敗、故郷ハイチの政情悪化……と暗いニュースが続いて創造意欲を喪失し、混迷する世界情勢も相まって一時はかなり落ち込んだという。

「だから、そろそろ何かを変えなきゃならないって感じていたんだ。でも必要なのは〈変わる〉ことじゃなくて〈戻る〉ことだった。オレは初心を、自分の使命を忘れてたのさ。で、冷静になって考えてみたら、すべて戻ってきたよ。オレの使命は人々に日常生活の辛さを忘れさせ、心に火を灯し、ポジティヴなメッセージを発することだったんだ……ってね」。

そんな転機にあった彼をさらに後押ししたのは、娘の誕生、そして現時点で〈21世紀最大のヒット〉と認定されているシャキーラとのコラボ曲“Hips Don't Lie”だった。〈オレもまだ捨てたもんじゃない!〉と奮起したクリフは、フージーズのためにためていたアイデアもすべて注ぎ込んで、6枚目のソロ作に着手。それが今回リリースされたニュー・アルバム『Carnival Vol. II : Memoirs Of An Immigrant』だ。ただ、「当初は続編を作るつもりはなかった」と彼は強調する。

「でも、曲を作ってるうちに世界中の音楽の影響が混ざってきて、〈あの時と同じ感覚だ〉と気付いたんだ。『The Carnival』は世界旅行みたいなアルバムで、〈ヒップホップ・ワールド・ビート〉の原型になった。今回も同じことだよ。ほら、いまは〈愛はどこに行ったんだ?〉と言いたくなる状況だろ? そんな世の中を巡るさまざまな問題について語っていて、みんなをひとつに結ぶアルバムなのさ。ボブ・マーリーと同じようにオレは〈ワン・ラヴ〉を信じてるからね」。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2008年01月17日 18:00

ソース: 『bounce』 294号(2007/12/25)

文/新谷 洋子