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インタビュー

The Mars Volta

時空をねじ曲げる強烈な轟音、国境を飛び越える色とりどりのリズム――あなたには聴こえているだろうか? ここに詰め込まれた未来のロック・サウンドが……

そういうのが嫌でたまらない


  マーズ・ヴォルタの生み出すロック・サウンドは、ラテンやジャズ、プログレ、サイケデリック、そしてメタルにパンクなどのさまざまなエッセンスを吸収して吐き出されたものだ。そんな彼ら独自の世界観は、革新的かつ実験的であるがゆえに時として聴き手の理解の範疇とロックという枠組みを越え、一般的な常識を逸脱する壮大なスケールを持つ。とにかくマーズ・ヴォルタのスケールはデカイ、デカすぎる。そして4枚目となるニュー・アルバム『The Bedlam In Goliath』では、そのスケールがさらに巨大なものへと進化している。

「いま5枚のアルバムを同時進行で作っているんだ。すぐ隣の部屋にマスタリング担当者が控えているから、こっちの作業が終わるそばから彼に手渡すという具合だよ。で、実はマーズ・ヴォルタの5枚目のアルバムも作っているところ。でも今日は『The Bedlam In Goliath』の話をしよう(笑)」。

 すでに次作とは! この溢れ出る創造力は何なんだ? やはり常識では捉えられない。そうそう、この発言の主はバンドの中心人物であり、昨年2枚のソロ作を発表したギタリストのオマー・ロドリゲス・ロペスである。世間一般であたりまえなことが、彼には当てはまらない。奇人? 変人? いやいや、天然の天才。彼は規格外の思考と想像力を持つアーティスティックな人物なのだ。それは音楽業界に蔓延したセールス至上主義に対する発言にも表れている。

「スタジオは壁に飾るゴールド・ディスクをめざして作業する場所じゃない。そういう表面的なものは妙なプレッシャーになったり、〈成功とは何か〉という固定観念を植え付けたりするからね。アーティストの価値は商業的な能力で判断されるべきじゃないし、俺はそういうのが嫌でたまらないんだ。スタジオは僕らにとって遊び場であり、崇拝の場。そこから生まれる素晴らしいものはゴールド・ディスクじゃない。レコードとは内なるエネルギーをくれるものであり、人間性を思い出させてくれるもの、そしてまったくの他人と結びつけてくれるもの。こうしてインタヴューを受けて世界の両端にいる人間同士が通じ合えるのもレコードのおかげだ。それが僕らのやっていることの本質なんだよ」。

 真のアーティストならではの言葉だが、誤解のないよう補足しておくと、彼らは自分たちの音楽を一人でも多くの人に届けたいと思っているのも事実であり、オマーの発言はあくまでストイックな姿勢で音楽に取り組み、音楽をアートとして捉えているからこそ出てきたものである。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2008年02月14日 19:00

ソース: 『bounce』 295号(2008/1/25)

文/池田 義昭