インタビュー

DE DE MOUSE(2)

郊外の匂い

 初期ヨーロッパ産テクノを想起させる音色と、ニューミュージックの幻影を見せるオリエンタル&ポップな編曲、控えめに壊れてみせるブレイクコア的なビート……それぞれのピースが不思議なバランスで溶け合ったこの楽曲は、2006年の〈RAW LIFE〉を契機に瞬く間に広まり、アンセムとして記憶された。日本のポップスや童謡の情景を別の舞台へ水平展開する……例えるならSPECIAL OTHERSがジャム・バンドのフォーマットで奏でた〈うた〉世界のようなものを、彼も独自のやり方で実践したのかもしれない。かつてエイフェックス・ツインやROMZ周辺のテクノ~ブレイクコアに共鳴していた彼が、この手法を確立する過程には、矢野顕子や松任谷由実、くるりからキリンジに至るまでの、ポップスの〈再発見〉があったという。

「キリンジの“悪玉”のリミックスがお店で流れているのを聴いていたら、プロレスのヒールのことを凄いコーラスで歌っていて。そのセンスが凄いなって、突然思ってしまった。それに気付いたら、コード展開ももちろんだけどコーラスが素晴らしいんだ、っていうのがわかるようになって。(音楽的には)彼らがスティーリー・ダンとかが好きなんだな、っていうのはわかったけど、時期的にそういう掘り下げには興味がなくて。彼らの音楽に、郊外の匂いっていうのを感じたんです。団地や公団、田んぼ、街灯とか……歌詞に登場するちょっとした単語からそれを感じて。1年くらいはキリンジかユーミンばかり聴いていて、だんだんその頃から作るものもメロディーを前に出すようになってきた」。
▼文中に登場するアーティストの作品。

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掲載: 2008年05月08日 22:00

ソース: 『bounce』 298号(2008/4/25)

文/リョウ 原田