インタビュー

MANAFEST(2)

人間として成長したね

 マナフェストはあくまでもラッパーだ。今回もメロディーを歌うのは2005年作『Epiphany』から顔を覗かせている、サウザンド・フット・クラッチのトレヴァー・マクニーヴァン。サウンド的には若干ポップに変化しているが、総じて従来のファンがニヤリとするであろう〈ラウド・ロックとヒップホップの融合〉という内容なのでご安心を。ちなみに、プロデューサーも前作から続投となるアダム・メッシンガーが起用されている。

「楽曲に関しては……もちろんビートもリリックもすべて重要。特にリリックには重点を置いているんだ。“Lean On Me”はいつも支えてくれる友達への感謝の気持ちを綴ったもの。〈僕も彼らの力になりたい、いつでも力になるから〉っていう感じかな。誰でも辛い時っていうのはあるからね。最終的に決めるのは自分なんだけど、でも友達が支えてくれていることで助けられる部分って多いじゃない? “Free”は僕自身が自由に生きている様をそのまま音楽で表現してみたんだ。自分の人生を自由に生きて、自由を手にするために立ち上がる。立ち上がれば困難な状況だって変えることができる。人生だって変えられる。僕たちには信念を貫く自由があるんだ」。

 まさにアルバム・タイトルに通じる答えだ。そして、そんな信念はジャケットにも貫かれている様子。

「アートワークっていうのはすごく重要だと思う。アルバムの音を表現するものだし、そうあるべきものだよね。今回のジャケットはもう見てくれたかい? 男の子が黒板に絵を描いているんだけど、その絵っていうのが、彼の抱いている夢を意味しているんだ。そしてその男の子は僕自身。その子が大きくなったらいまの僕になるってわけ」。

 クリス少年の夢は、左手で握るスケートボードを華麗に乗りこなし、太陽の下、大勢の観衆から拍手をもらうことだったのかもしれないが、いまはチョークを握る右手で書き出したリリックと曲、そしてパフォーマンスによって大勢のオーディエンスから拍手をもらっている。当時描いた夢とは違うが、確実に〈誇れる自分〉に近づいていることだろう。

「今作のソングライティングをしてる時、〈僕も人間として成長したな〉って実感したんだよ。そしてそれはサウンドにもはっきりと投影されていると思う。曲作りもパフォーマンスも自分を信じてこそ成立するものだと思うし、自分でそれを実感できてこそ成立するものだと思う。僕がこのアルバムでラップしていることは、自信を持ってみんなに語り掛けたいメッセージばかり。誰かに知ってほしいこと、勇気づけたいと思う気持ち、それらは自信を持ってこそ伝わるものだからね」。

 本作は日本先行でリリースされ、その後10月には初来日公演も組まれている。

「日本でのライヴがすごく楽しみで仕方ないよ。絶対盛り上がると思う!」。

 こちらに関しても自信たっぷりなマナフェスト。きっと真っ直ぐな瞳と力強いラップで日本のファンを勇気づけてくれることだろう。大いに期待したい。
▼マナフェストのアルバムを紹介。

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掲載: 2008年05月29日 21:00

ソース: 『bounce』 299号(2008/5/25)

文/宮原 亜矢