インタビュー

MANAFEST

ラウド・ロックも、ヒップホップも、大きな挫折も、すべてストリートから教わった。だからこそ、僕の描くポジティヴな言葉はこんなにも生々しくて……

みんなを勇気づけたいんだ


「ツアーが終わってからソングライティングに取り掛かったんだけど、すぐにいろいろな曲のアイデアが浮かんできて、アルバムの全体像もどんどん明確になっていった。レコーディングに入ったのは昨年12月で、終わったのは4月。今回はあんまり時間がないっていうか、そういう気分で作っていたから、ある種のプレッシャーは感じたね。だけどプレッシャーと対峙していたぶん、良いアルバムに仕上がったと思うよ。もちろん常にプレッシャーに打ち勝てるタイプってワケじゃないけど、今回はプレッシャーがあったからこそベストなものが作れたと思ってる。約2年ぶりのリリースだから、僕自身、何度も聴き返してはワクワクしているところだよ」。

 自主制作盤から数えれば4作目にあたるこのたびのニュー・アルバム『Citizens Activ』は、マナフェストことクリス・グリーンウッドのそんな喜びがこちらまで伝染してきそうなほど素晴らしい出来映えだ。本国カナダで2006年に発表された前作『Glory』は、ここ日本でも評判が評判を呼び、およそ5万枚のヒットを記録。

「輸入盤が話題になったのをきっかけに、ボーナス・トラック付きで日本盤を出すってことが決まって……何ていうかすごく嬉しかったよ。僕は以前から日本が大好きだったし、スケートボードを通じて親近感も沸いていた。スノーボードをやってる友達からもよく噂は聞いていたしね。だけど、好セールスを残せたって聞いた時は正直驚いたよ」。

 18歳の頃、両足の大怪我によってプロ・スケーターとしての夢を断念。茫然自失でベッドに横たわる彼が、「(敬虔なクリスチャンである彼ならではの表現だが)神のお告げによって」音楽と出会ってから今年でちょうど10年になるという。

「いまのミュージック・シーンにはたくさんの音楽が存在しているけど、なかにはダークなメッセージのものも多くあるよね。それは世界が良くない方向に動いているからとか、いろんな理由が背景にあると思うんだ。だけど、僕がマナフェストとして音楽を作っていくのは、みんなを勇気づけたいっていう信念あってのこと。〈夢を持って前に進んでほしい〉といった気持ちを、伝えていきたいんだよ」。

 ちなみに彼は足の怪我だけでなく、父親の自殺という深い悲しみも経験している。つまり、例えば『Glory』収録の“Bounce”で〈俺にできるならお前にもできる〉とリスナーを鼓舞する言葉にも、実体験が伴っているからこその説得力がある、ということ。ラップ・ロックのサウンド的な魅力だけでマナフェストに出会ったとしても、リリックを読み解けば共感や感動の嵐が聴く者に押し寄せてくるはずだ。男子高生が〈これカッコイイんだよ〉と友達に『Glory』を試聴させている光景を目撃したことがあるのだが、そんな〈人に薦めたい〉との衝動を駆り立てる魅力があったから、偶然ではなく、必然的に彼はブレイクしたのだろう。

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掲載: 2008年05月29日 21:00

ソース: 『bounce』 299号(2008/5/25)

文/宮原 亜矢