フライング・ロータスの個性を作り上げた音楽たち
フライング・ロータスことスティーヴン・エリソンの音楽性を考えるうえで、まず重要なのは恵まれた家系だろう。何より大きかったのは叔母にアリス・コルトレーンがいたこと。夫であるジョンの遺志を継いで壮麗な音世界を切り拓いた彼女は昨年逝去しているが、今回の『Los Angeles』では共演も実現されている。また、従兄弟であるサックス奏者のラヴィ・コルトレーン(ジョンとアリスの息子)がサックスを習っていたスティーヴンに与えた影響も血肉化されているはずだし、ジャズにおけるスピリチュアル・マナーの素養があったからこそ、スティーヴンがカルロス・ニーニョにフックアップされたのだとも言える。さらには、70~80年代にダイアナ・ロスの大ヒット曲“Love Hangover”を筆頭とするコマーシャルな名曲を数多く手掛けたソングライターのマリリン・マクレオードが祖母にあたるという事実も興味深い。が、そのように音楽的な環境で育ちながらもスヌープの『Doggystyle』を愛聴してドクター・ドレーに憧れるという世代感こそが、スティーヴンのビート制作に豊かな個性を与えたのだろう。より現在の表現に通じるという意味では、共演を志望しているポーティスヘッドの影響も聴き逃せないところだ。
ダイアナ・ロスの76年作『Diana Ross』(Motown)