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インタビュー

Anarchyに続け! ストリートが薫る日本語ラップあれこれ

 流通形態が多様化したこともあってか、日本語ラップのリリース量はここ最近でさらなる増加傾向を迎えている。そのうえ普通のアルバムやシングルに加えて、いわゆるストリート・アルバム~ミックスCDも縦横無尽に登場してくるのだから、アーティストもリスナーも望まずしてある程度の細分化を進めてしまうのは仕方ないのかもしれない。そんななかでAnarchyのニュー・アルバムはズバ抜けた個性と説得力、リリシズムに溢れたドラマ性を見せつけてくれたわけだが、その『Dream and Drama』以外にも注目すべき作品は日々リリースされている。ここではAnarchyにも通じるストリート感とスキルとハートを持ち合わせた、ハードで個性豊かな作品を選りすぐって紹介しておこう。
(編集部)

バラガキ 『MIC & ROSES』 KIX(2008)
東京のYellow Diamond Crewから登場したフリースタイル巧者の初ソロ作。DJ JACK HERERのスクラッチに煽られるイントロから、スキルフルなソロ曲と集団で突き上げるアグレッシヴなトラックがバランス良く飛び出し、最後まで一気に聴ける。ギザギザな語り口もカッコイイ!
(出嶌)

SEEDA 『HEAVEN』 SEEDA/KSR(2008)
年頭にいきなり登場した傑作。無闇に昂らず、悪ぶらず、シンプルなビートの上を淡々とした洞察と熱情が行き来する。情緒に流れる瞬間も清々しく、アルバム・トータルでの完成度は『花と雨』どころじゃないんでは? クラシックというよりはスタンダードか。
(出嶌)

BES 『REBUILD』 Pヴァイン(2008)
乱れる心、生活とその代償に身を削る日々に揺れ動きながらも自身を戒め、見えぬ未来に踏み出さんとする初のソロ・アルバム。それは、みずから〈どの道この身は光より暗い〉と歌う漢との表題曲中にもある〈Do Or Die〉の切羽詰まった思いの結実だ。シンプルながらソウルフルなサンプリングが広がるビート群も秀逸。
(一ノ木)

BRON-K 『奇妙頂来相模富士』 諭吉/KSR(2008)
SD JUNKSTAきっての実力者とされることも多い異能のMCが、TKCや別掲のNORIKIYOに続いて、ようやく放ったソロ・デビュー作。クールなフロウと独特の言語感覚が、格好良いだけじゃない奇妙なおかしみも湛えているのが好ましい。I-DeAとBACH LOGICのトラックも高品質。
(出嶌)

FRANKEN 『TOKYO FIGHT KLUB 2』 ROCK SOLID(2008)
DJ CASHがミックスを担当したストリート・アルバム。〈CONCRETE GREEN 7〉に収録されたG.O(ICE DYNASTY)らとの“Hip Hop Mastery”やKEN-RYWとのコラボなどを通じて引き出しをどんどん増やしている姿が頼もしい。次こそはオリジナル作を!?
(出嶌)

SIMON 『SIMON SAYS』 HARLEM(2008)
USメジャーと肩を並べるようなスケール/クォリティーのトラックに、弱みを見せぬラッパーらしいスタンスは、いずれも現場に直結したヒップホップ・ゲームの中心たるラッパーの佇まい。去っていった仲間への気持ちをリリカルに切り取った“ある日突然”は人間性の一端が見える新機軸だろう。Anarchyの参加もあり。
(一ノ木)

NORIKIYO 『OUTLET BLUES』 EXIT TUNES(2008)
アルバム一枚で生活が一変するほど事は簡単でもなく、いまも居座るマイナスとプラスに格闘し、自分を支えるので精一杯……楽ならざる現実の影が依然色濃い2作目は、SEEDA『花と雨』以来のBACK LOGIC全面プロデュース作。主役の選ぶ一連の土臭いビートを差し替えた彼の決断が音楽面の活力となった。
(一ノ木)

BIGIz' MAFIA 『Life is Pain』 Assault ABUS(2008)
SHITAKILI IXの親玉による強力なソロ2作目。HIDA-D(韻踏合組合)とQ(ラッパ我リヤ)を配した目玉曲を筆頭として、イメージ以上に穏やかな表情のクールなラップが、サウス調、ウェッサイ、ロック系……と重たいビートを喰らう。新人のBIGGER DICEも覚えておきたい。
(出嶌)

ASHRA 『LYRICS 2 GO』 LEGENDARY inc.(2008)
アツい『ASHRA THE GHOST』でのデビューから約1年で登場した2作目。〈CONCRETE GREEN〉で聴けた逸曲“BAD BOWY”も収録し、ボスのDENやTWIGYなど、多様な世代の声を衒いなく交えているが、前作以上に気合の入った主役自身がこのムードを牽引している。
(出嶌)

『山仁 da sportsman & Q-ILL South End Tokyo』 諭吉(2008)
DJ ISSOがミックスを手掛けるストリート・アルバムの最新弾。今回は東京・町田を根城に活動する2人のMC、山仁 da sportsmanとQ-ILLそれぞれが過去音源やエクスクルーシヴ曲などを持ち寄ったラフでロウな内容だ。なお、山仁はLibra移籍後の第1弾アルバム『クッキーマン』が間もなくリリース!
(出嶌)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2008年10月02日 21:00

ソース: 『bounce』 303号(2008/9/25)

文/一ノ木 裕之、出嶌 孝次

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