インタビュー

Joe

およそ10年所属したレーベルを離れ、みずからキャリアの舵取りを行うようになったジョー。新作『New Man』を引っ提げたニュー・ジョーの姿を見よ!!

こんなに音楽が楽しかったことはない


  7作目となるニュー・アルバムのプロモーションのために来日したジョーは、高級ホテルのスイート・ルームに据えられたスタイリッシュなソファーに腰掛け、ワイン片手に上機嫌でこう語った。

「いまほど音楽が楽しいと思ったことはないし、いまほど音楽業界にいることが楽しいと思ったこともないんだ」。

 ジョーとは取材の席で数回顔を合わせているが、ここまでリラックスした姿を見るのは初めてのことだった。それは、彼にとって遠慮すべき存在がなくなったことと無関係ではないだろう。ジョーは長らく籍を置いたジャイヴを離れ、自身と旧友とによるインディー・レーベルに移籍したのだった。新レーベルはキダー/563という。キダーとは、ディアンジェロやインディア・アリーらを世に送り出したネオ・ソウル・シーンの重要人物であり、90年代末には経営不振に陥っていたモータウンの再建にも取り組んだキダー・マッセンバーグのこと。ジョーのデビュー前からのマネージャーとしても有名だ。

「彼は20年来のパートナーなんだ。しかも、契約書なしでずっとやってきているぐらい、彼のことを信頼しているのさ」。

 キダーのレーベルと共に並列にクレジットされる563とはジョー自身のレーベル。彼はアーティストであるのと同時にいまやレーベルのCEOでもある。

「新しい責任も増えたけれど、毎朝目覚めると凄く気持ちが良いんだ」。

 ニュー・アルバムのタイトルは、そんなフレッシュな気分をストレートに反映して『New Man』と付けられた。そんな同作で最大の目玉となるのはズバリ、ステレオタイプスらがプロデュースする“Why Just Be Friends”。これまでジョーがさほど積極的に使ってこなかったファルセットを多用する清涼感に溢れたナンバーだ。

「自分のスタイル的にあまりやってこなかったということはあるね。というのも、アグレッシヴな感じのほうが自分っぽい感じがしていたからね。ただ、ファルセットを歌えるってことは示しておきたかったんだ」。

 この曲での美しいファルセットは彼の新境地と言っても過言ではない。今後の彼にとって強力な武器となろう。

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掲載: 2008年10月16日 21:00

ソース: 『bounce』 303号(2008/9/25)

文/荘 治虫