インタビュー

ソウル復権を裏付ける、本物の歌はここにある

ROI ANTHONY 『True Soul Lifestyle』 MoHitz(2008)
70年代ソウル風の優美なメロディーと現代サウスのビートを違和感なく同居させた、最高に理想的な〈Today's R&B〉。レ・ジットのメンバーをソロ活動に駆り立て、インディーながらもこんなディープなヴォーカル盤を作らせてしまうあたりに、現シーンのソウル回帰気分が窺える。

LYFE JENNINGS 『Lyfe Change』 Columbia(2008)
ノエル・ゴーディンとは同名異曲の“The River”を前作で歌った彼もサム・クック後継者のひとり。と同時に2パックやビギーの人生に共感し、ポジティヴな気持ちで歌い続けていたら、こんなにソウルフルな作品が完成した。魂に訴える歌は、刑務所慰問ライヴでも真価を発揮。

NOEL GOURDIN 『After My Time』 Epic(2008)
イナたいサザン・フレイヴァーと、90年代ヒップホップの定番ジャズ・サンプルを引用したアーバンなセンスが絶妙に溶け合ったレトロ・モダン作品。ファルセットを交えたスウィートでビターなテナーはラヒーム・デヴォーンとジャヒームの中間的な感じながら、これは得難い個性だ。シーンが成熟したいまこそ響く声、沁みる声。

ERIC BENET 『Love & Life』 Warner Bros./ワーナー(2008)
フォーキー路線から本来のR&B路線へと軌道修正した新作。歌も熱い。スタイリスティックスを彷彿とさせる“You're The Only One”などは、ソウル回帰があたりまえになったいまなら素直に受け入れられよう。シーンの風向きはオールド・スクール体質な彼に味方している。

DAVE HOLLISTER 『Witness Protection』 Gospo Centric(2008)
ゴスペルを安住の地にしてからの2作目。もともと歌ってきた濃密なソウルも、俗世の垢を洗い落として無欲で歌うことでいっそう浮き彫りに。ジェラルド&ショーンの故レヴァート兄弟を称えた“Champion”は、ソウル復権の時代だけに余計に胸に響く。

KEANTHONY 『A Hustlaz Story』 Reprise(2008)
クルーナ名義の時代に苦汁を舐めた新世代ソウル・クルーナーがここにきてフル・アルバムを発表できたことに、歌モノ復権ブームの一端を見る思いだ。ますます歌濃度を強めるタンクの最近作に倣ったような重厚なR&B集。が、無闇に熱く歌い倒さないのが、この人の美学だ。

RAHEEM DEVAUGHN 『Love Behind The Melody』 Jive(2008)
マーヴィン・ゲイ『I Want You』の現代版だと本人が語ったこの2作目は、前衛性に耳を惹かれた前作よりも格段にヴォーカル濃度がアップ。狂おしいまでの愛を熱く歌い上げた楽曲群は、愛を捧げられた〈Woman〉たちだけでなく男性リスナーをも唸らせた。ネオ・ソウル以降の新たな潮流を生み出した重要作。

CALVIN RICHARDSON 『When Love Comes』 Nu Mo/Shanachie(2008)
同期のアンソニー・ハミルトンがメジャーで活躍する一方、90's濃い口シンガーの草分けである彼がインディーで再出発とは皮肉だが、復活できたこと自体が歌モノ好景気の時代という証拠か。濃密にして伸びやかなヴォーカルはいまも絶好調。あとは運と縁があれば……。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2008年10月16日 21:00

ソース: 『bounce』 303号(2008/9/25)

文/林 剛