Joe(2)
現代のR&Bを表現したかった
一方、アルバムからのセットアップ・シングルだった“E.R.”は、従来からのアグレッシヴなジョーを堪能できるミディアム・テンポのナンバーだ。緊急救命室を舞台にセクシュアルな世界を描いたコンセプチュアルなこの曲は、D・マイルやラショーン・ダニエルズなどダーク・チャイルド一派が手掛けている。
「そもそも、ラショーンをロドニー・ジャーキンスと引き合わせたのは俺なんだよ。彼は俺の弟みたいなもんだったし、可愛がってたんだ」。
“By Any Means”などブライアン・マイケル・コックス制作の曲にソングライターとして参加しているジョンテイ・オースティンも、ラショーンと同じようにジョーとは旧知の仲だとか。実は今回の収録曲は、後半のオマケ部分を除き、ジョー自身によるソングライト/プロデュース曲は一切ない。それにもかかわらず、アルバムからジョーらしさが溢れ出て止まない理由について、彼自身はこう説明する。
「ジョンテイ・オースティンなんかは15歳のときから知ってて、ずっといっしょにやってきたから、本当の弟のように思ってる。俺たちは同じような音楽に影響を受けてきて、いつもいっしょにハングアウトしてるからお互いのことがよくわかるのさ。考えていることもね」。
それにしても、自分のレーベルに移ったのだから、当然のように自作曲でくると予想していたのだが……。
「それにはふたつ理由があるんだ。ひとつは、〈現代のR&B〉というものを表現したかったってことだ。そのためにはいまのR&Bを、まさにいま活躍している人たちといっしょにやる必要があったんだよ。もうひとつは、自分で書いて自分でプロデュースする次のニュー・アルバム『Signature』を約半年後にリリースするからなんだ。『All That I Am』(97年)あたりが好きなコアなファンのために、自分だけのものを出したいって思ってね。それとは違うものにするという意味でも、今回の『New Man』はこういう作品になったんだ」。
さきほど触れたアルバム後半のオマケとは、この『Signature』からのスニペット(短縮ヴァージョン)だ。13~17曲目の5曲に渡って、いかにも彼らしく優しい響きの美曲がホンのさわりだけ披露されるというチラリズム。早く全部聴きたい!と思ったあなたは、すでに色男ジョーの術中にはまっているのである。
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