GIOVANCA(3)
いろんな要素をコレクトしたの
ふたりがガップリ組んで制作したアルバム『Subway Silence』(曲も大半がふたりの共作によるものだ)には、90年代の〈渋谷系〉なんかを思い出す人もいるだろう、ラジオ・フレンドリーでグッド・メロディーな楽曲ばかりが詰まっている。確かにソウルの感覚を多分に持ったジョヴァンカの声ではあるが、そこに都市型ポップ・サウンドをいい具合にまぶすことで彼女の個性を際立たせていったベニーの読みとセンスは流石だ。
――サウンドを決定づけていくなかで、何かキーになった言葉って、あります?
G「(しばらく考えてから)コレクティングね。いろんな要素、いろんなサウンドを収集していって、そこから構築していったの。最初は曲そのものも、もっといろんなタイプを集めていたのね。で、そのなかから絞っていったのがアルバムに収められた曲なのよ。何しろ私はいままでいろんな音楽を好きになってきたから」
――例えば?
G「昔からモータウン・ソウルやジャズを聴いてて、一方で両親の出身からカリビアン・ミュージックもね。80年代にはマドンナやジョージ・マイケルといったポップスを聴いて、90年代にはヒップホップに夢中になって、またソウルやジャズやファンクを掘り下げていって。そうしたいろんな音楽の要素が私のなかに蓄積されている。それらを少しずつコレクトしたのがこのアルバムだって言えると思うの」
――特に影響を受けたアーティストは?
G「ミニー・リパートンね」
――それ、凄くわかります。“Melancholic You”というメロウな曲などは、とりわけミニー・リパートンの影響が出ていて、いいなぁと。
BS「うん、そうそう」
G「嬉しいわ~。これってデリケートな曲だから、リヴィングにヴォーカル・ブースを作って、カーテンで囲って、ひとりで歌ったの。他の曲では彼に立ち会ってもらってたんだけど、これはひとりでやった曲だったから特別な思い入れがあるわ。確かにミニー・リパートンが大好きな私の一面が自然に出てるかもしれない。あとほかには初期のダイアナ・ロスとかディオンヌ・ワーウィックとかロバータ・フラックなんかも大好きよ。もちろん意識して誰々っぽく歌おうなんてことは思ってない。でも、好きでずっと聴いてた人たちの感覚は自然に刷り込まれているものなのよ。そうした偉大なシンガーたちの影響が私の血になっているのなら、それは喜ぶべきことよね」
ジェットラグのせいもあって、インタヴューの後半は静かにジョヴァンカの話を横で聞いていたベニーが、最後に言った。
「そうやっていろんな音楽要素や影響などをコレクティングし、そのうえでまとめていった作品だけど、いろんな冒険をしながら、最終的にはみんなが考えるより深いアルバムになったと自負してるんだ。これはタイムレスで聴けると思う。そこ、けっこう重要なポイントだよ」。
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