インタビュー

SPECIAL OTHERS(2)

予想を裏切り、期待に応える

  「前作で自分たちのやりたいことが全部できて、最高の作品になったっていう手応えがあったんです。だけど次の作品を作ることになって、どういうふうにすればいいのかわからないまま手探りで作りはじめて……」(宮原良太、ドラムス)。

 しかし、彼らはニュー・アルバム『PB』で、見事に〈シーズン2〉の幕開けを飾っている。ぺンタトニックによる太い幹が支えるキャッチーな楽曲を軸に、自由なセッションで独特の世界を構築していく彼らならではのスタイルは変わらない。が、これまで以上にアグレッシヴな部分はより攻撃的に、センシティヴな部分はより繊細に、バンド・サウンドの表情はよりいっそう豊かに輝いている。

「料理で言うなら、塩と胡椒だけで作った男の料理、みたいな。前作はいろんなスパイスを使ってたのが、今回はシンプルな味付けで、だけど奥深いっていう」(柳下武史、ギター)。

 ルーツ・ロック・レゲエをベースにした“Potato”や、ポータブル・レコーダーで一発録りしたアコースティック曲“sunrise”など、新しいチャレンジも随所に垣間見られる。

「誰かが言ってておもしろいなって思ったんだけど、〈予想を裏切り、期待に応える〉っていう。まさしくそれをやりたいなって思って作ったのがこのアルバムなんです」(芹澤優真、キーボード)。

「より素直に、本能のままに作れたというか……結構、曲に生活感が出てると思うんですよね。人って、別にずっとボーッとしてるわけじゃなくて、時には泣いたり怒ったりするし。音楽を聴いてても、シャッフルするとアイドルの次にジャズが流れたり。あれよあれよと変わっていく感じというか 。それって、その人なりの日常だと思うし。僕らの曲も、自然とそういうのが出てると思う」(又吉優也、ベース)。

 9分を超える“LIFE”は現在の彼らの思いが詰まった名演と言えよう。

「今回俺のなかであったのが、ガツンとエッジの効いた攻めのギター。そもそも俺にはロックの血が流れてないんですよ(笑)。だけど前からあるジャジーな感覚と、自分なりのロックな感じが融合して、また新しい発見があった。“LIFE”ではその感情表現の幅をよく出せたかなって思いますね」(柳下)。

「確かに、ロックの人たちともいっぱいやってきて、ロックの持つ爆発力にインスパイアされた部分は絶対にある」(芹澤)。

「それを知ったことで、逆に自分たちの持ち味もより深くわかって。だからこそ“twilight”や“LIFE”みたいに穏やかな曲も生まれたと思うし」(宮原)。

「まわりのバンドからインスパイアされたものや、自分たちの経験値が無意識のうちに出てくるものなんだなって」(芹澤)。

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掲載: 2009年04月16日 08:00

更新: 2009年04月16日 17:26

ソース: 『bounce』 308号(2009/3/25)

文/宮内 健