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インタビュー

ひとつの音楽からいろんな何かが聴こえてくる、なるほど ザ SPECIAL OTHERS!

【ジャム・バンドの源泉】
ジャム・サウンドを広く日本に浸透させつつあるスペアザのルーツとして挙げられるのは、今年再結成を果たしたフィッシュだ。彼らが99年に行った〈フジロック〉でのライヴに衝撃を受けたとメンバーはかつて語っているが、フィッシュの確立した遊び心溢れるサウンドとキャッチーなメロディーを繰り出していくスタイルは、スペアザの大きな基盤となっているのは言うまでもない。また、オルガン・インプロヴィゼーションの面で多大なる影響を与えたのはメデスキー・マーティン&ウッドだろう。ジャズやファンク、オルタナ・ロックなどさまざまなジャンルを消化した前衛的なスタイルに近似が窺える。さらに、ニューオーリンズを代表するバンドのギャラクティックにも、かの地特有の陽気な開放感や躍動感という点で通じるものがあると言えるだろう。最後に、ラテンやカリブを基調にしたオーガニックな聴き心地に共通項が見い出せるシム・レッドモンド・バンドもここでぜひ挙げておきたい。
(藤井)


ギャラクティックの98年作『Crazyhouse Mongoose』(Volcano)

【スピリチュアル・ジャズの趣】
スペアザが得意とするスペイシーな音作りには、70年代のスピリチュアル・ジャズ~フュージョンのエッセンスが見受けられる。特に心地良いエレピの音色にはウェルドン・アーヴィンのソウルが脈々と受け継がれているようにも。また、ヒップホップを通過した世代としては、カルロス・ニーニョ率いるビルド・アン・アークの浮遊感に溢れた温かいサウンドともシンクロする。
(藤井)

【リズムのツボ】
〈音楽にとって重要なのはリズムだ!〉とは、とある著名な音楽家の発言だが、彼らの核になっているのはまさにそのリズム。もっとも耳を惹くのはアフリカ音楽からの影響だ。多彩なドラミングで魅せる宮原がその影響を語る通り、直系はアフロビートの重鎮、トニー・アレン。フェラ・クティと共にアフリカ音楽とファンクを掛け合わせた強靭なサウンドを構築した御大のしなやかかつ巧みなドラム捌きはしっかりと受け継がれ(特にライヴにおける宮原のドラム・ソロはフェラ・クティ名義のライヴ盤で聴けるトニーのそれを彷彿とさせる!?)、スペアザのサウンドを支えている。また、来日公演時に共演済みのアンティバラスやデトロイトのノモら音響へ傾倒した現代アフロビート勢も、アフリカ音楽の要素を組み込んだ即興演奏という意味で繋がるかも。またユルめの楽曲ではマリのコラ奏者、トゥマニ・ジャバテのバンド編成での人工アフリカン・ループ作を思わせる。
(渡辺)

【ギターの真髄】
スペアザの楽曲において、柔軟な技で展開をリードしていくギター。ここで同種の匂いを感じるのは、ギタリストの柳下もフェイヴァリットとするスケール・アウト奏法でお馴染みのジョン・スコフィールド。なかでも彼の『Uberjam』における〈微量音階調整スタイル〉を思わせる。ほかにも『PB』に収録された“Charlie”の由来となるチャーリー・ハンターも近い畑のギタリストだと言えよう。また、マーク・リーボーがジョン・メデスキーらを迎えたフェイク・ラテン作でのギター・プレイのエキスが、『IDOL』収録の“Mambo No.5”などから感じられたりも。
(渡辺)

【ロックな心】
ロックは他分野の音楽を融合することに長けた雑食性の強いジャンルだが、そういう意味ではジャズもファンクもラテンもモリモリと咀嚼してしまうスペアザは、大変優れた〈ロック・バンド〉だともいえる。彼らの超技巧的なのに耳触りが異様にポップなサウンドは、ロック界屈指の雑食王、フランク・ザッパの『Hot Rats』や、ジャズとロックの間を洒脱な即興演奏ですり抜けたハットフィールド・アンド・ザ・ノース『The Rotter's Club』あたりの隔世遺伝のようにも聴こえておもしろい。
(北爪)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2009年04月16日 08:00

更新: 2009年04月16日 17:26

ソース: 『bounce』 308号(2009/3/25)

文/北爪 哲之、藤井 大樹、渡辺 雄作

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