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インタビュー

METRO STATION

発車オーライ! 耳馴染み抜群のエモいメロディーとキラッキラの疾走サウンドでみんなの身体をシェイクするよ!! 準備はできてる?

  ポスト・ハードコアの延長上でエモ・ブームが本格化しはじめた90年代後半を振り返れば、もちろん隔世の感は否めない。とはいえ、シーンにおける昨今のエレポップやクラブ・ミュージックへのアプローチ、いわゆる〈エモトロニカ〉と呼ばれている風潮は、エモがもともと文系・草食系の若者たちのカルチャーを象徴するものだったことを考えると、実はメタルの影響が幅を利かせていた頃よりもずっとエモらしい、つまり〈エモい〉と言えるのかもしれない。

まさかこんなに成功するなんて!

 2007年リリースのファースト・アルバム『Metro Station』がついに日本盤化されたLA発のメトロ・ステーションもまた、エモトロニカ・ブームの追い風と共にロック・シーンに登場し、あっという間に人気バンドの地位――シングル“Shake It”とアルバムはそれぞれ全米チャートの10位と39位に喰い込んだ――を確かなものにしたバンドのひとつ。そんな状況を「凄くエキサイティングだよ!」と興奮気味に語ってくれたのは、グループの頭脳と言ってもいいシンセサイザー担当のブレイク・ヒーリー(以下同)だ。

 「思うに、僕たちはシンプルでキャッチーな歌を作ってる。誰でも楽しめるような歌をね。だけどスタイルはちょっと変わってると思うんだ。80年代に流行っていたようなサウンドと、いまの人たちがやっているようなサウンドをミックスしているのが、オーディエンスにはフレッシュに聴こえたんじゃないかな。何か新しいものみたいにね。最初に自分たちの音源を〈MySpace〉で発表した時点で凄く良い反応が返ってきたから、アルバムを作っている段階から〈きっとみんなが夢中になるはずだ〉って僕は思っていたけど……それにしても、まさかこんなに成功するとは予想していなかったよ! だって僕が夢見ていたのはバンドを組んでアメリカをツアーするってことだけだったんだもの(笑)」。

 ブレイクの言葉にもあるように、彼らは〈MySpace〉や〈YouTube〉などネット上の〈口コミ〉がきっかけで成功を手にしたバンドだ。そもそも、ディズニー・チャンネルの人気番組〈ハンナ・モンタナ〉シリーズの撮影現場で出会ったメイソン・ムッソ(ヴォーカル/ギター)とトレイス・サイラス(ヴォーカル/ギター)がブレイクと知り合ったのも、〈MySpace〉を通じてだったそう。

 「メトロ・ステーションはメイソンとトレイスにとって初めてのバンドなんだよね。2人ともどこか他のバンドで活動していたわけじゃなくて、いっしょに書いたいくつかの曲を〈MySpace〉上でアップしてただけなんだ。初めてそれを聴いた時、〈僕が大好きなタイプの音楽要素をすべて含んだ曲だ!〉って思ったよ。だから〈この人たちといっしょに音楽を作らなきゃ!〉ってね(笑)。だって、お互いにやりたいことが一致していたんだから」。

 ブレイクによると、知り合った当初から2人はすでに現在とそれほど変わらない音楽を作っていたそうで、それがキュアーやニュー・オーダー、デペッシュ・モードといった80年代のニューウェイヴ・バンドを愛し、シンセサイザーとドラム・マシーンの音が大好きなブレイクの琴線を大いに刺激したというわけだ。

 「彼らはシアトル出身のポスタル・サーヴィスというバンドを熱心に聴いてたね。アメリカよりも他の国でよく知られているバンドなんだけど(笑)。ああいう音楽……つまりエレクトロニックな要素を採り入れ、キャッチーで楽しい音楽をやりたいって言ってたよ。だけどその一方で、僕たちブリンク182みたいなパンク・バンドが好きって点でも共通していたんだ」。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2009年05月28日 17:00

更新: 2009年06月05日 15:04

ソース: 『bounce』 310号(2009/5/25)

文/山口 智男