インタビュー

『In A Perfect World...』を完璧に楽しむための……(その2)

【POLOW DA DON】 ケリを育てた大物の、ティンバランドと並ぶもうひとり。アトランタを拠点にジム・クロウでの活動を経て裏方に転向。ケリを起用したリュダクリスの“Pimpin' All Over The World”(2004年)はポロウにとってもプロデューサーとしての最初の成功だったのでした。リュダクリス絡みでは2006年の大ヒット“Runaway Love”もケリがライティングに関与したポロウ制作曲となりますね。その後インタースコープ傘下に設立したレーベル=ゾーン4でケリと契約。その第1弾アクトとなるリッチ・ボーイのアルバム『Rich Boy』では、ケリも“Good Things”などで歌声を聴かせてくれます。

【THE CLUTCH】 すでに本誌では何度も取り上げていますが……バレワ・ムハマド、パトリック“J・キュー”スミス、エゼエキル・ルイス、キャンディス・ネルソン、そしてケリ・ヒルソンの5人からなるソングライター・チーム。もともと共同で仕事をすることの多かった5人が自然にユニットとなっていったのが2006年頃。オマリオンの“Ice Box”やシアラの“LIke A Boy”、ジェニファー・ロペスの“Wrong When You're Gone”などなどを2~5人の編成で次々に手掛け、ビートが複雑化する時代にマッチした曲が書ける連中という評価を確定させています。ただ、ケリのシンガー・デビューが具体化するにつれてほとんどの曲はケリ以外の4人で書かれるようになり、クラッチがエグゼクティヴ・プロデュースを務めたティファニー・エヴァンスの『Tiffany Evans』にケリは不参加でした。さらにその4人すらもバラバラにライティングを行う機会が多くなっています。『In A Perfect World...』に収録の“Return The Favor”では久々に5人が揃って曲を書いていますが、今後の展開は果たしてあるのでしょうか……。

【LATE WORKS】 そのように裏方的なソングライター仕事が激減していくのとは対照的に、2008年頃からケリは自身の顔が見えるフィーチャリング・ワークスを増やしているようです。特に印象的だったのはクリス・ブラウンとのやや大仰なデュエット・ナンバー“Superhuman”。さらにはナズのヒット・シングル“Hero”でも力強いヴォーカルを響かせていました。ラッパーとのコラボということでは、ブロンディの同名曲を引用したカーディナル・オフィシャルとの“Numba 1(Tide Is High)”もありましたし、今年に入ってからはアッシャー・ロスの“She Don't Wanna Man”があり、その後もロン・ブロウズとのコラボが発表済み。『In A Perfect World...』のヒットもあって、顔の見える客演はもっと増えていきそうですね。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2009年07月01日 18:00

ソース: 『bounce』 311号(2009/6/25)

文/出嶌孝次