インタビュー

SD JUNKSTA

濁りも澱みも巻き込んで、曲がりくねった川は流れていく……相模の地に集まったジャンク野郎たちの、生きる現実の言葉。これはもう対岸のサウンドじゃないぜ!!

俺たちのノリしか詰まってない

  最注目アーティストの一人へと駆け上がったリーダーのNORIKIYOがいて。その後を追うように同じく評価を高めるBRON-K、土臭いラップとコミカルなテイストも交えた世界観が独特なTKCというオリジナル・メンバー3名に、リズム捌きが光るKYNを加えた、ソロ作でも知られる面々がいて。さらには、SEEDAとの〈CONCRETE GREEN〉シリーズを先鞭に、側面からメンバー(と周辺アーティスト)を支えるDJ ISSOや、グループ外の活動を経て加入したOJIBAH。DJ/トラックメイキングからラッパーへと転じてメンバーとなったWAX、ライターやPV監督などの顔も持つSITE、MCバトルへの出場経験もあるDJ DEFLOがいて、日本在住12年に及ぶペルー人グラフィティー・ライターで、レコーディングにも参加するPITXのような準メンバーというべき男もいる……神奈川は相模原のヒップホップ集団、SAG DOWN POSSE(SDP)の中心を成すラップ・グループ=SD JUNKSTAの道程は、「ヒップホップがどうこうっていうより、単にノリが合ってツルみだした」(KYN)という言葉のままに、時々で交流を深めたメンバーを加えて膨れ上がり、現在の大所帯へと至っている。大半が地元を近くする彼らの繋がりは深い。それは、いまも続く彼らのパーティー〈SAG DOWN〉をはじめとしたライヴの現場と、何より、彼らが言うところの〈ヤサ〉=事務所を根城に深まってきた。2007年にはクルーとしてすでに構えていた〈ヤサ〉は、プリプロのできる環境を備え、いまも毎日のようにメンバーたちが集まってくる場所だという。今回の取材も、そこに集まったメンバーを前に行われたものだ。

 「実際、SD JUNKSTAとしてまとまりはじめたのもここが出来てからっぽいし、ここの存在はデカい。アレしろコレしろって言われないじゃないですか(笑)。だから楽だし、気ィ緩みまくって遊んじゃう」(NORIKIYO)。

 それぞれの精力的な動きを十分すぎる前フリに、SD JUNKSTAがついに完成させたファースト・アルバム『GO ACROSS THA GAMI RIVER』も、〈ヤサ〉に集まってくるメンバーたちのノリをそのままパックしたものだという。

 「目を瞑ってアルバムを聴くと、完全にここの情景しか浮かんでこないっていうか。一人でいる時だったら内面的な部分が出るけど、みんなが集まったらそれこそギャグの応酬みたいな。だから、ホントにふだんの俺たちのノリですね。凝り固まんないノリが出たし、俺たちのノリしか詰まってない」(NORIKIYO)。

 「若い頃だったらこんぐらいギャグみたいに絡むことも多いと思うんですけど、ウチらはけっこう平均年齢が上ななかで、ニートを前面に押し出したスタイルで行けた、みたいな(笑)。そこらへんがよく出てます」(KYN)。

 アルバム全体を包むそうしたムードは、WAXとOJIBAHの2人でマイクを回した曲“LET'S GET IT ON!!”誕生のエピソードひとつからも窺うことができる。

 「ここでヒマすぎて、朝の4時とかに。それでOJIBAHくんと〈すげえ絡むやつやりたいっすよね〉って言ってたとこに、ミルキーなビートですげえイイのがあって、〈これイイね〉って。遊びでデモを作っていっては宙ぶらりん状態のまま寝かしてて、結局は後からスタジオ行って仕上げることになって」(WAX)。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2009年08月19日 18:00

ソース: 『bounce』 313号(2009/8/25)

文/一ノ木 裕之