インタビュー

三浦大知

男子三日会わざれば刮目して見よ! シンガーにしてダンサー、コリオグラファーにしてソングライター。常に最高を求めて終わりなき挑戦へと駆けてゆく、アイツの名は……

成長できる瞬間をもらえた


  大知が帰ってきた、なんて言うときっとファンに怒られてしまうことだろう。ソロ・デビュー作の『D-ROCK with U』から3年半。『Who's The Man』が確かに久しぶりのニュー・アルバムであることに間違いはないが、彼が過ごしてきた年月は決してブランクなんてものではない。

 「この3年半の間には本当にいろんなことがあったんですけど、例えば、昔からお世話になっているロック・ステディ・クルーの30周年のアニヴァーサリーでNYでライヴをさせていただいたりとか、自分が成長できる瞬間みたいなものをすごくたくさん用意してもらえた気がしますね」。

 彼の言う「いろんなこと」とは、ヤング・アーバン・シーンの代表格であるクリス・ブラウンやオマリオンとの交流を通して「音楽をもっと感覚でやっていいんじゃないかなって」気付かせられたことだったり、クラブ・フィールドのアーティストであるajapaiとのコラボ“声をかさねて…”(2006年)だったり、ゴスペラーズやSkoop On Somebodyといったヴェテランと共に参加した〈SOUL POWER SUMMIT〉だったりと、確かに幅広く、実りも多い。Full Of HarmonyやL.L BROTHERSたちと定期的に出演している男性R&Bシンガーによるイヴェント〈SUGAR SHACK〉も彼が力を入れて来た活動のひとつだ。

 「〈SUGAR SHACK〉は、単純に先輩たちとパフォーマンスさせてもらえることで、いろんな部分で勉強できることがあるということと、すごく〈チーム感〉があって、ジャンルごと上がっていっている感じっていうのが、他にない特色ですね。そこに参加させてもらえるのは本当に光栄です」。

 この6月には、大知をはじめとするイヴェントのレギュラー陣が歌うテーマ・ソング的な爽快チューン“SUGAR SHACK”がリリースされるなど、ますます精力的な動きに目が離せないこのイヴェントで、大知はしっかりと存在感を示している。

 こうした、世代を超え、国境を超え、あるいは歌とダンスというジャンルを跨いださまざまな活動を通じて、大知は大きく成長を遂げた。『Who's The Man』においてもっとも顕著なのはヴォーカル面の進化だ。

 「前のアルバムだと、けっこうナチュラルに歌うことが多かったんですね。歌詞を理解して、何も考えずに集中して歌うっていう。いまは身体の構造や声帯のことが昔よりわかってきたので、自然とここはこういう歌い方ができるから、こういう声にしたほうがいいかな、とか、ここはファルセットのほうがいいのかなとか、少しずついろんな声にチャレンジしはじめています」。

 もとから歌唱力には定評のある大知だが、今回のアルバムでは歌の表現の幅があきらかに広がった。一例を挙げると、“Baby Be Mine”では高域で声を張らずに歌うことによって得られる〈R&Bの余裕感〉によって、いまだに日本では陥りがちな〈声を張ること=ソウルフル〉というステレオタイプの呪縛から見事に逃れている。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2009年09月16日 18:00

ソース: 『bounce』 314号(2009/9/25)

文/荘 治虫