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インタビュー

三浦大知(2)

妄想をしています

 また、今回の大知は7曲でソングライトに参加しているほか、「仲のいい友達」だという千晴とふたりでスタジオに入って作ったという“STOP..”(千晴のアルバム収録の“STOP!!”とはヴァージョン違い)など、プロデュース面にも積極的に携わるようになった。KREVAが参加した“Magic”も大知が作詞作曲したナンバーで、この曲のオリジナル・ヴァージョンを聴いたKREVAから、ある日突然連絡をもらったのだという。

 「〈“Magic”に勝手にラップを入れてみたので聴いてください〉っていうようなメールが来て、どういうことだと思って速攻聴いて。ぼくからお願いしようと思っていたのに、KREVAさんのほうからボールを投げてくださったので、ぜひにという感じでした」。

 KREVAは“Magic”の他に“Your Love”にも参加しており、両曲ともオートチューンを巧みに操ってUSのメインストリームに歩調を合わせる。いや、この絶妙なハマリ具合は歩調を合わせるどころの話じゃない。大知の引き出しの多いヴォーカルとKREVAの完璧なロボ声ラップは、日本のアーバン・シーンからUSへの回答と言ってもいいほどの優れた出来映えだ。

 その“Your Love”を含むアルバム冒頭の4曲で、ヴィヴィッドなシンセ使いなど現在のトレンドを踏まえたプロダクションを提供しているのは、安室奈美恵の近作でも知られるNao'ymtである。

 「Naoさんとの出会いはすごく大きいと思ってます。全編日本語の楽曲も作るし、英語のセンテンスとしておもしろいキーワードを使って格好いいダンス・チューンも作るし、切り口がすごく鋭い人」。

 彼の他にも、UTA、dee.c、U-Key zone、Tiger、村山晋一郎、DJ JIN(RHYMESTER)、STY、ajapai、BACH LOGICといった多彩なプロデューサーが参加し、大知と有機的な共同作業を行っている。例えば、COMA-CHIが参加したDJ JIN制作の“HOT MUSIK”は、両者と共に「プリプロみたいな形でスタジオに入って、アプローチ的にはヒップホップのスピード感で作っていった」というように、トラックメイカーたちとアイデアを出し合いながら作り上げていくというUSのメインストリーム的な制作スタイルが、魅力溢れるアルバムへと結実したのだ。もっとも、現状に飽き足らない大知はこんなことも言っている。

 「ミント・コンディションをきっかけにバンド・サウンドを少しずつ聴くようになって、そこにぼくのひとつの武器であるダンスをうまく絡めたらおもしろいのかな、とかいう妄想をしています」。

 妄想がどんな形になってゆくのか。大知の成長はまだまだ止まりそうにない。

▼『Who's The Man』参加アーティストの作品を一部紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2009年09月16日 18:00

ソース: 『bounce』 314号(2009/9/25)

文/荘 治虫