JAY-Z
論議を呼んだ“D.O.A.(Death Of Auto-Tune)”でまんまと温められ、絶好の間合いでニュー・アルバムが登場! 帝王がシーンに提示する新たな青写真とは?
シーンに対するチャレンジ
「素晴らしいことだね。俺は、音楽というのはカンヴァセーションだって考えてる。つまり、これだけ大きなリアクションがあるってことは対話が成立してるってことなんだ。自分の言ったことに対していろいろな意見が出てくるのは当然だし、それは音楽に対してパッションがあることの証だと受け止めているよ」。
新作『The Blueprint 3』からのリード・シングル“D.O.A.(Death Of Auto-Tune)”をめぐるすさまじい反響について語るジェイ・Zはとても満足げで、その節々からは軽い安堵感みたいなものも感じ取れる。それもそのはず、昨夏のシングル“Jockin' Jay-Z”をもって本格始動した『The Blueprint 3』のプロジェクトは決して順調とは言い難く(当初のリリース予定は昨年11月だった)、ノーIDが手掛ける〈D.O.A.〉の登場によってようやく軌道に乗ったようなところがあるからだ。デフ・ジャムからの離脱と新レーベル=ロック・ネイションのソニーとの契約締結があきらかになった直後、去る6月にNYのFM局HOT97で先行公開されたこの曲は、オートチューンを使った曲の粗製濫造とラッパーたちのクリエイティヴィティーに警鐘を鳴らすセンセーショナルな内容で、たちまち賛否両論を巻き起こした。
「〈D.O.A.〉はシーンに対するチャレンジの意味で作ったんだ。誰か特定の人間をディスしてるわけじゃない。ヒップホップにおいては、トレンドがギミックに変わってしまったら排除しなくちゃいけないんだよ。ユタ州に住む中年女性までが〈ブリンブリン〉って言い出した時点で、俺たちはもうやめるべきなんだ。つまり、自分たちの作ったトレンドがマスに到達したときがやめどきってこと。いまじゃウェンディーズのCMでも男の子がオートチューンを使って歌ってるだろ? いい加減にしてくれって感じだよ(笑)。だから、みんなで次のレヴェルに行こうってことさ。それがヒップホップが生き残っていく唯一の道なんだよ。例えば、おまえが黒いスニーカーを履いてるなら俺は青のスニーカーを履くぜ、っていうさ。ヒップホップってそういうことだろ? コンペティティヴで、誰がいちばんフレッシュかを競うのがヒップホップなんだ」。
▼『The Blueprint 3』に参加したアーティストの作品を一部紹介。
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