インタビュー

LEDISI

インディー・ソウルの才女という勲章はもう要らない。リミッターを外した圧倒的な歌唱力を引っ提げ、最高を求めて自由に進化し続けるレディシの現在地はここだ!!

私はそういう人間じゃない


  クリスマス盤を挿んで、ヴァーヴからのオリジナル2作目となるニュー・アルバム『Turn Me Loose』を発表したレディシ……このようにスラッと書けるなんて、9年ほど前、『Soulsinger』で登場した時に〈インディーで孤軍奮闘する女性シンガー〉などと言われていた頃を思い出すと、ちょっぴり感慨深い。最近はクインシー・ジョーンズの75歳を祝うコンサートに出演したり、各種トリビュート企画にも引っ張りダコ状態。この後もUNCF(United Negro College Fund)からの依頼で、自身の経歴と音楽ビジネスについて大学で講義をする予定らしく、「お金はないのに請求書ばかり届いて、床で寝ているようなこともあった。自分には音楽の仕事は向いていないのかも、とも思った」と振り返るインディー時代からすると隔世の感がある。

 「いまは露出も増えたし、経済的な援助も得やすくなったわ。もちろんインディーならではの部分で気に入っていたこともあるけど、誰からの助けも受けずに自分ひとりで(註:サンドラ・マニングという相棒はいたが)やっていくのは大変だった」。

 とはいえ、メジャーに籍を置いてからは順風満帆だったかといえばそうでもなく、前作『Lost & Found』を出してからは「作家としての壁に直面していた」という。

 「何も書けなかったのよ。『Lost & Found』みたいなCDをまた作ろうとしたけれど、しっくりこなかったわ。そんな時、(新作でカヴァーすることになる)バディ・マイルスの“Them Changes”を聴いて、ソウル・ミュージックと呼ばれるものをもう一度聴いてみようと思ったの。凄くインスピレーションを受けた。あの曲がスランプから抜け出させてくれたの」。

 その結果か、今回の新作では、ニューオーリンズ生まれ/西海岸ベイエリア育ちのレディシらしいファンキーでロッキンで奔放な〈素〉が前面に押し出されている。

 「前作と同じようなアルバムを作ることは簡単だけど、私はそういう人間じゃない。私の作品を全部聴いてきた人なら、今回も違和感はないはずよ。でも前作から聴きはじめて、私のライヴを観たことがないなら、変わったと思うかもしれないわね。『Turn Me Loose』っていうのは、私をひとつの型にはめないでという意味なの。私はレディシよ。いろいろな音楽を愛する自由な存在なの」。

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掲載: 2009年10月21日 18:00

ソース: 『bounce』 315号(2009/10/25)

文/林 剛