インタビュー

LEDISI(2)

最高を求めたから

  前作との変化を指摘されることが多いのか、ややナーヴァスになっている印象も受けるが、新作では“Everything Changes”など、〈Change〉という言葉をタイトルに使った曲も目立つ。

 「〈Change〉という言葉は、変化を好まない人間のことを考えて使っているの。私が変わったと思う人もいるだろうとは予想していたわ。新作はジャズっぽさが少ないから。でも、音楽を決まった聴き方でしか聴けないようになっている状態は変えないとね。変化は良いことよ。自分が変わる時は成長する時だし、そうすることで自分はどういう人間で、何ができるのかがわかるの。危険を冒したけれど、後悔はしていない。皆が私に追いつくまでちょっと時間がかかるだけなのよ」。

 変わったが本質は変わっていない……今回の新作はそんな風に解釈しておくのがいいのかもしれない。ただ、今作には「いつも真実を教えてくれる兄貴分」と慕うレックス・ライドアウトが前作に続いて参加したほか、これまでになくヴァラエティーに富んだ制作陣が集結。本人も「他人と共同で曲を書くことを受け入れ、アイデアを受け入れることができたわ。普段の私はそういうことに関してかなりうるさいんだけど」と言うように、実際に大きく変化した部分もある。

 もっとも、その名前を見れば、すでに彼女と交流があったか、もしくはその結び付きが必然的に思える人たちばかり。例えば、“Love Never Changes”などを手掛けたラファエル・サディークは同郷オークランドの仲間だし、序曲“Runnin'”を手掛けたブラッカリシャスのチーフ・エクセルにしても、「4年間インディーのプロジェクトに取り掛かっていて完成間近」と話すラウド・スピーカーというグループでいっしょに活動してきたほどの仲だ。

 「ラファエルとはたむろしながら音楽を作ったって感じね。基本、彼は私をスタジオで一人にさせてくれたし、私も彼が作業しているときは彼を一人っきりにしていた。それからいっしょに曲を仕上げて、次の曲で同じことをまた最初から繰り返す。チーフは〈同じことをやるぐらいなら、ヒップホップの才能を出せ〉って後押ししてくれたの。今回はチーフとレックス、それにファイア・デプトとの付きっきりの作業が多かったわ。“Higher Than This”をやったジャム&ルイスに関してはテリー・ルイスと過ごした時間が多かった。彼はいままで私がやったことのない曲の書き方を教えてくれた。チャッキー・トンプソンは、曲を提供してくれているロレンゾ・ジョンソンがワシントンDCのゴーゴー・シーンでチャッキーの演奏を聴いていて……彼と仕事をした人たちの話を聞いたら、私もいっしょに仕事がしたくてたまらなくなったの」。

 他にもフィリーのアイヴァン&カーヴィンらとのコラボも実現させた彼女は、「私が最高を求めたから、最高の人たちと出会えたのよ」と満足げ。そして自信も漲る。

 「私の旅路に付き合ってくれてありがとう。『Turn Me Loose』を聴く時は固定観念に囚われないでね。皆が私に望む私ではなく、このままの私を受け入れてほしい」。

 リスナーの懐の深さが試されそうな今回の新作だが、レディシに対する愛が変わらなければ何も問題はないはずだ。

▼『Turn Me Loose』に参加したアーティストの作品を一部紹介。

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掲載: 2009年10月21日 18:00

ソース: 『bounce』 315号(2009/10/25)

文/林 剛