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インタビュー

懐かし新しいローファイ・サーフ・ロックがインディー・シーンを席巻中! ――(1)

 

TVを点けても絶望感を煽るニュースばかりだし、天気だっておかしいし、本当に地球は終わりそう……。こんな時だからこそ人々は〈純粋なもの〉を求めてしまうのかしら!? で、直後にJFK暗殺によって一気に暗闇に沈んでいくこととなる63年、何やら不穏な空気が漂い出した同年3月に奇しくもUSで大ヒットしたのが、ビーチ・ボーイズ“Surfin' U.S.A.”だった──。何の話かって!? ここで紹介するバンドの親世代は、同曲に代表される陽気なポップスに夢中だったということですよ。そして時代は巡り、2010年。幼い頃に聴いた懐かしの60'sポップス的メロディーをサイケデリックなローファイ・サウンドに乗せたインディー・バンドが、同時多発的にUS(主に気候の良いビーチ沿い)で旋風を巻き起こしているのです。ちなみにこのページの主役、ドラムスも昨年のEP『Summertime』や新作『The Drums』をフロリダで作ったのだから、やはりこれは海沿い主導のムーヴメントと言って差し支えないでしょう。

いまから思えば、きっかけはMGMTやグリズリー・ベアだったのかも。NYを拠点に発火したネオ・サイケの波が南下した際、NY特有の文学的な要素が剥ぎ取られしまった……とか? 〈サーフィンしたい!〉と呑気に騒ぐ者もいれば(例えばドラムスやサーファー・ブラッド)、淡い恋心と共に遠い夏休みの記憶を呼び覚ましてくれる者もいるが(例えばモーニング・ベンダース)、総じて感じられるのは無邪気さだ。これらのサウンドにあえて名前をつけるなら、〈ノスタルジックな新世代ローファイ・サーフ・ロック〉といった感じ!? きっと、ビーチ・ボーイズに胸焦がした〈お父さん世代〉には懐かしく響くだろうし、〈息子世代〉には新鮮に映るはず。ドラムスのアルバム・デビューをきっかけに、ますますこの界隈が話題になりそうですよ! 

 

▼文中に登場したアーティストの作品を紹介。

左から、ビーチ・ボーイズの63年作『Surfin' U.S.A.』(Capitol)、MGMTの2008年作『Oracular Spectacular』(Columbia)、グリズリー・ベアの2009年作『Veckatimest』(Warp)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2010年07月08日 19:08

更新: 2010年07月08日 19:12

ソース: bounce 322号 (2010年6月25日発行)

文/小泉いな子