インタビュー

the pillowsのアルバムをかいつまんで紹介!



『KOOL SPICE』 キング(1994)

上田ケンジが脱退→山中さわおがリーダーへ→キング移籍という激動の期間を経て届けられたのは、ジャズ、ボサノヴァなどの影響を受けたこのスタイリッシュ路線の一枚だった。まんまスタイル・カウンシルなジャケも含めて、都会派ポップスを意識したスマートな演奏も印象的。 *岡村

 

『Please Mr.Lostman』 キング(1997)

プロデュースを務める吉田仁の影響もあり、時のオルタナ・ロック系にアプローチすることでトリオとしての新境地を切り拓いたターニングポイント作。幹の太いアンサンブルを聴かせる、ミスチルもカヴァーした“ストレンジカメレオン”など、いまでもライヴで人気の楽曲も多い。 *岡村

 

『RUNNERS HIGH』 キング(1999)

タイトルに偽りのないエネルギッシュでスピード感のあるナンバーが、勢い付いたバンドの充実ぶりを伝えている。生演奏のラフさを残した音処理がライヴ・バンドとしての魅力を感じさせると同時に、山中のヴォーカルには堂々たる風格も。MAYA MAXXによるポップなジャケも◎。 *岡村

 

『Thank you, my twilight』 キング(2001)

B面集と併せて発表された本作は、山中のひねりを利かせたポップセンスの結晶であり、尖ったサウンドと珠玉のメロディーが見事に溶け合った傑作だ。当時の流行であるダンス・ロックに接近した“My Be-autiful Sun(Irene)”は、いま聴くと少しニューゲイザーっぽい。 *鬼頭

 

『GOOD DREAMS』 キング(2004)

〈夢はもう夢じゃない〉と高らかに歌われる、文句なしの名曲“その未来は今”を筆頭に、夢(と現実)がテーマに。曲調はかなり幅広く、そこで夢と現実の狭間のような情景が描かれていく。ここで活動15周年という区切りを付け、夢のひとつだったかもしれないUSツアーを実現させた。 *鬼頭

 

『TURN BACK』 キング(2004)

初期のナンバーや未発表曲を再録した6曲入り。現在は入手困難な2作目『WHITE INCARNATION』(92年)の収録曲や、方向性を模索していた時代に発表したシングル“Tiny Boat”(96年)など、オリジナル・リリース時の線の細さとは裏腹な、荒削りなギター・ロック解釈が新鮮だ。 *岡村

 

『MY FOOT』 キング(2006)

前年にUSツアーを成功させ、山中はTHE PREDATORSを始動させたりと、精力的な活動を続けるなか、自身の軌跡を振り返る表題曲で〈やっぱり僕は今もストレンジャー〉とは……。サウンドの傾向は、USオルタナにも通じる簡素なギター・アンサンブルによるドライヴ感を志向している。 *鬼頭

 

『Wake up! Wake up! Wake up!』 avex trax(2007)

レーベルを移籍して心機一転、本作は新たな始まりに相応しい、開放感のある楽曲揃い。ツイン・ギターの緻密な絡みと、軽やかでアッパーなメロディーがフィーチャーされているなか、叙情派UKロックを思わせる“スケアクロウ”が美しくロマンティックに響く。 *鬼頭

 

『PIED PIPER』 avex trax(2008)

スカパラのホーン隊を迎えた“Tokyo Bambi”、怒髪天のメンバーが参加した“Purple Apple”、チェロをフィーチャーした“Last Holiday”など賑やかでヴァラエティー豊かな曲がズラリ。なのに全体的にボトムの太い演奏が前面に出ていてゴリッとした手応え。37分少々なのも潔い。 *岡村

 

『OOPARTS』 avex trax(2009)

先行シングルを除き、吉田仁の手を離れてセルフ・プロデュースで仕上げた意欲作。チャットモンチーやストレイテナーらとの対バン・ツアーや、初の武道館公演を実現させるなどこの時期の勢いを実感させつつも、緩急を付けたミドルテンポの曲がバンドの余裕と安定感を伝えている。 *岡村

 

『HORN AGAIN』 avex trax(2011)

山中のソロ作を経て、ここではバンドならではの爽快感や痛快さに回帰。“Movement”を筆頭に、円熟味などとは無縁のフレッシュな演奏を聴かせてくれる。少年の夢や傷心をセンティメンタルに描く詞も含めて、悩めるすべての若者(だった人たち)のためのロックンロール・アルバム。*鬼頭

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2012年01月18日 00:00

更新: 2012年01月18日 00:00

ソース: bounce 339号(2011年12月25日発行号)

文/岡村詩野、鬼頭隆生