インタビュー

INTERVIEW(2)――5人のぶつかり合い



5人のぶつかり合い



摩天楼オペラ



――自分たちが何たるかを見せつけたいと思ったとき、そこで音楽を変える必要はなかったわけですよね?

「ええ。インディーズの頃から、自分たちの音楽がどういうものかというのはよくわかってたし。イントロだけでも聴こえてくれば、ヴォーカルが聴こえる前に摩天楼オペラだとわかるような曲をやってきたつもりなので。実際、周りからもよくそう言われてきたんです」

Anzi「そういう意味で意識した部分があるとすれば、〈より尖っていこう〉ってことだけでしたね。生半可なところはなくしていこうと」

「もうひとつ大事にしたかったのが〈人間味〉なんです。こういった激しい音のバンドの場合、特にドラムとかは機械っぽくて冷たい音になりがちな傾向がありますけど、そこで逆に、もっと生々しい音にしたいと思ったんです。それこそ各々の人間味が溢れ出すような」

Anzi「そこにも通じることなんですけど、突き詰めればこのバンドのいちばんの売りは〈曲の作り方〉にあると思うんです。いま、デスクトップ・ミュージックが主流になってきていて、どんなバンドに話を聞いても大概の場合は〈作曲者がある程度作り込んできたものを、他のプレイヤーたちがなぞっていく〉ということが多いみたいなんですね。だけど僕らの場合、割合的には苑が曲を持ってくることが多いんですけど、彼が実際に持ってくるのはメロディーとコードだけ。それを全員でスタジオでジャムりながら練っていくんです」

彩雨(摩天楼オペラ)
彩雨

――昔のミュージシャンたちがインタヴューでよく口にしていた〈この曲はジャムりながら作ったんだ〉というやつを実践しているわけですね?

Anzi「まさに(笑)。実際このバンドの場合、1時間スタジオに入っていれば、そこで1曲ぐらいは完成してしまう。そういうところがあるんで。そんな作り方をしてるからこそ独特の緊張感というのがあるし、それこそ人間味というのも出てくることになるんじゃないかと思う」

彩雨「曲の構成なんかにもその影響は出ますよね。それこそ、その1時間のうちに、どんどん曲自体が変わっていくことになる。しかも誰か1人だけからアイデアが出てくるんじゃなくて、5人全員から溢れ出してくるんで。非常にクリエイティヴな空気があるんです、その場に」

「やっぱり最初に作曲者がイメージを提示しすぎてしまうと、つまらないですよね。うちはメンバー個々の主張が激しいので、むしろそこで素直に渡しちゃったほうが絶対におもしろいものになる。ただ、みんなの主張が強いぶん、それに負けないように歌わなきゃならない僕は大変なんですけど(笑)」

――主張のないメンバーが1人でもいたら成り立たないスタイルですよね。信頼関係がそこにないと。

Anzi「うん。以前はやっぱり、曲作りのときには特定のメンバーが主張することも多かったんですけど、なかなか言葉では主張しにくいメンバーというのもなかにはいるわけですよ。でも、せっかく〈バンド〉をやってるんだから、そこは各々ちゃんと出すようにしようじゃないか、と。思ってることは全員でぶつけ合う。特にメジャー・デビューしてからは、そのへんを強く意識するようになってきましたね」

「うん。5人のなかで遠慮があったら意味もないし」



摩天楼オペラというジャンル



摩天楼オペラ_ANZI_A
Anzi

――音楽性の部分では、よく〈シンフォニック・メタルとヴィジュアル系の融合〉といった形容をされてきましたけど、当事者としてはどんなふうに解釈しています?

「そのへんについても最近バンド内でよく話すんですけど、単純に言うと既成のジャンルで囲われたくないんですね。ヘヴィー・メタルはもちろん好きだし、それがこのバンドの基盤になってるのも確かなんですけど、必ずしも典型的なメタル・バンドではないと思ってるんです。ヴィジュアル系というのも、化粧をしていればそう呼ばれざるを得ないということでしかなくて、音楽的な括りとしてはすごく曖昧じゃないですか」

Anzi「そうやって括られることがリスナー側の先入観とか偏見に繋がるんだとすれば、もったいない話ですよね。各メンバー、もちろんルーツはありますけど、みんな音楽的にそんなにも偏ってないんですよ。ロックばかりではなくポップスも聴くし、彩雨はダンス・ミュージックとかも好きだったりするし、あらゆるものを聴いてるメンバーたちなんで。いまはメタルとヴィジュアル系がキーワードみたいなことになってますけど、それ以外の音楽を聴いてる人たちにも引っ掛かるものが絶対何かしらあると思う。だから最終的には、冒頭で苑が言ったように〈摩天楼オペラというジャンル〉になればいいなと思ってるんです」

彩雨「メジャー・デビューしてからは特に、自分たちの音楽を言葉で説明しなくちゃいけない機会というのが増えてきたんですね。ただ、昔から音楽スタイルは変わってないんです。そこでインディーズ時代にどうしてたのかと思い返してみると、単純にそういうことを気にしてなかったんですよ(笑)。だから結局は最初から〈摩天楼オペラの音楽〉としか形容できないものだったんだなと改めて感じさせられてるところもあって」


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掲載: 2012年03月07日 18:01

更新: 2012年03月07日 18:01

インタヴュー・文/増田勇一