インタビュー

摩天楼オペラ 『Justice』





[ interview ]

摩天楼そびえる大都会に似つかわしい洗練された感覚に、歴史と伝統に裏付けられた美しさをたたえたオペラを思わせる荘厳さ。摩天楼オペラのメジャー第1弾アルバム『Justice』は、まさにこのバンドの特性と独自性をダイレクトに伝えてくれる力作だ。しかもオペラがあくまで〈人間が演ずるもの〉であるのと同様に、このバンドの音楽はテクニカルな意味での説得力や完成度ばかりでなく、思いがけないほどに生々しい体温を伴っている。「バンド・ヒーロー不在の時代に、自分たちこそが〈次代〉への繋ぎ手でありたい」という熱さも持ったこのバンド。今回は作曲面での中枢でもあるフロントマンの苑、技巧派ギタリストとして評価も高いAnzi、そして鍵盤を操る彩雨の3人に話を訊いた。



バンド・ヒーローになりたい



苑(摩天楼オペラ)

――待望のメジャー第1弾アルバムということになりますが、作品像としてはどういった性質のものであるべきだと考えていましたか? 必ずしも〈最初の集大成〉という感じではないようにも思うんですが。

苑(ヴォーカル)「そうですね。前回のフル・アルバムがむしろベスト的な内容だったので、今作ではもっと摩天楼オペラの音楽そのものをジャンルとして提示するようでありたいな、と。実際、このバンドならではというものを、より突き詰めたものにできたと思ってます」

Anzi(ギター)「タイミング的に考えても、新しい名刺代わりの一枚になることは間違いないので、ブレてない自分たちの音楽を見せつけてやろうという気持ちが強かったですね。正直、いま、音楽シーンのなかで〈バンド〉というのは下火だと思うんですよ。僕はそれを時代のせいにしたくないし、単純に強力なバンド・ヒーローが不在だからだと思ってるんです。楽器を始めてみたいという動機になるようなバンドがいない。だけど僕自身はそういうアーティストを見て育ってきたし、自分でもそうなりたい。各々が個性的で、いい意味で音で喧嘩しながら奇跡の〈1〉が生まれるというのがバンドってものの最大の魅力だと思ってるし。今回も、そんな作品にできればいいなと思いながらずっと制作に臨んでましたね」

彩雨(キーボード)「僕もそこは同じです。あと、ヴィジュアル系に限らずキーボード奏者というのは周りを見渡してみても少ないですけど、キーボードというものがどれだけバンド・サウンドに彩りを与えられるのか、どれだけ世界観を拡げられるのかというのを示したかった。実際、そういうものにはできたんじゃないかと思ってます」


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掲載: 2012年03月07日 18:01

更新: 2012年03月07日 18:01

インタヴュー・文/増田勇一