INTERVIEW(3)――大きな受け皿としての〈正義〉
大きな受け皿としての〈正義〉
耀
――さて、『Justice』という表題について。これは単純に収録曲のタイトルでもあるわけですけど、各曲の随所に〈正義〉とか〈自分の生き方〉みたいなものを連想させる言葉が散りばめられていますよね? それと無関係ではないんだろうな、と思ったんですが。
苑「その通りです。これは僕の本当に素直な思いですね。今回の歌詞については、ストーリーを考えたりとかそういったことを、ほとんどしてなくて。自分の心の奥を見つめ直すようにして書いたものがすごく多い。だから〈正義とは何か?〉とか〈生きること〉みたいな言葉が多くなってきたのかな、と。実は、アルバムの他の曲たちが揃っきてから、最後に“Justice”を作ったんですね。しかもそれを表題曲にしようという前提で。それを、他のすべての曲たちをひとつにまとめるような大きな受け皿にしようとしたんです。その時点ですでにあちこちにそういった言葉が散りばめられていたから、その〈正義〉という言葉でまとめるべきなのかな、と判断して」
――つまりアルバム全体を1曲に凝縮しながら表そうとしたのがこの曲、ということになるわけですね?
苑「ええ。摩天楼オペラってものをいちばんわかりやすく示した曲。それがこの曲ということになりますね」
Anze「タイトルだけ見たら恐らく、正義の味方がやってきて悪者をやっつけるみたいなものを想像されがちじゃないかと思うんですよ(笑)。だけどそういうものでは全然なくて。結局、人それぞれの価値観って本来違うわけじゃないですか。正しいと思ってることも違う。なのに国民性なのか、誰かの言うことに従って流されてしまいがちなことが多い世の中だと思うんですね。だけど人生一度きりだし、自分が正しいと思ったことを貫いたほうが楽しいじゃないですか。そういうスタンスで今回のアルバムは作ってるし、そういうメッセージをリスナーにも投げ掛けたかったし。同時に演奏者としても、それを説得力あるものとして聴かせるためには、自分たち自身に貫いてるものがないと。流行り廃りに左右されてるようでは〈正義〉なんて表現できないと思うんです。だからこそ自分たちがいまやりたくて、本気でカッコいいと信じてるものに忠実に作った。それがこの作品なんです」
彩雨「簡単に言えば自分たちのやりたいようにやった、ということですね。その意味においてはタイトルそのままのアルバムになったと思います。強くないとできないことですよね、貫くことって。だから僕ら自身、もっともっと強くなっていきたいし」
ルーツに忠実に
悠
――そうしたテーマがある一方で、いくつかの楽曲ではいわゆるラヴソングの域を超越したくらいにドロドロな世界が描かれていたりもしますけど(笑)。
Anzi「それは苑の性癖が出てるんじゃないですかね(笑)。絶対そうだと思いますよ」
苑「僕、MCとかで下ネタとかまったく言わないんですよ。キャラ的にもあんまり言いたくない。だけど歌詞がこんなだから、ファンからはちょっと変態だと思われてるようなふしがあって(笑)」
彩雨「内面にある何かが滲み出てるのかもしれないですよね」
苑「冷静にそういう分析をされると恥ずかしいね(笑)」
彩雨「でも彼は本当に、普段から下ネタとか絶対言わないんですよ。そこはぜひ誤解のないように(笑)」
――インストゥルメンタル曲が1曲入っていますが、それが“Just Be Myself”と銘打たれているのにも興味深いものがあります。まるで歌い手が自分自身のことを歌っている曲に付けそうなタイトルじゃないですか。
苑「恐らくさっき話したような“正義”という部分を、Anziが汲み取ってくれてるんだと思います」
Anzi「そういうことです(笑)。この曲の骨組み自体はアルバム制作が始まる前からあったんですけど、最終的に“Justice”というひとつの大きな器が決まったときに、このインスト曲の持つべき意味というのをよく考えて。実際、自分がカッコいいと思ったものを自分らしく貫こうとした曲なんで、タイトルもそういった意味合いのものにしました。まさに自分のルーツにひたすら忠実に弾いたという感じでしたね。そこは遠慮なしに作ったところがあります」