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インタビュー

LONG REVIEWーーkilling Boy『Destroying beauty』



木下理樹と日向秀和の双頭バンドであるkilling Boyの作る音は、ひとつのアイデアから自由に発展してゆくバンド・マジックというよりも、理想の最終形に照準を合わせてからそれぞれの持つ最高のセンスとスキルを注ぎ込んで作り上げた、極めて純粋で美しく完成された音楽作品という印象がある。

このセカンド・アルバム『Destroying beauty』で聴ける音は、木下の重要なルーツである初期ニューウェイヴ−−キュアー、ジョイ・ディヴィジョン、P.I.Lなどからの影響を初作以上に露わにし(ジョイ・ディヴィジョンと同じ“no love lost”なんてタイトルの曲もある)、同時に日向のルーツであるヒップホップ〜R&B経由の強靭なファンクネス−−執拗なワンループの魔力をたっぷりとリズムのなかに含ませて、ロック×ダンス・ミュージックのひとつの完成形を提示している。最近のトレンドで言えばチルウェイヴの流れで捉えるのも良いし、一方でリスナーにはノスタルジックな既視感と共に楽しめる要素もある。

木下の作る曲だから基本的には暗めなのだが、ひとつひとつの楽器の音がクリアで全体がリズミックに出来上がっているため、後味が意外にスッキリしているのもおもしろい。ドカンといきなりヒットする……というよりは、〈ミュージシャンズ・ミュージシャン〉的に深く静かに浸透していくタイプの作品をたゆみなく作り続ける、木下理樹の変わらぬ姿勢がまたひとつ良作を生んだと言えよう。ただただ音楽に触れることが好きなんだろうなという、邪気のない思いが真っ直ぐに伝わってくる。


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掲載: 2012年06月06日 18:00

更新: 2012年06月06日 18:00

文/宮本英夫