INTERVIEW(3)――顔が見えるものをやりたい
顔が見えるものをやりたい
ーー楽曲自体に関して言うと、オリジナルのポスト・パンクに対する愛情と、現在進行形の音へのアンテナを混ぜ合わせて、いかに自分たちらしく鳴らすかというのがkilling Boyのベースになっていると思うのですが、今回はそういった意味での何らかの狙いはありましたか?
「前作のほうがヘンにコンセプトを考えてたかもわかんないですね。トーキング・ヘッズ、ポップ・グループとか、そこにプリンスあたりをプラスしたうえで、ニューゲイザー的な、イパとかも好きですから、そういうのが混ざって……みたいなのを考えてましたけど、今回はみんなそれぞれ音楽聴いてるなかで出来たものって感じで、特にコンセプトはなかったですね。顔が見えるものがやりたいっていうぐらいで、それでセッションしていったっていう」
ーーみんなそれぞれいろいろ音楽を聴いてるし、1枚作ってみてどういうのがカッコイイかって思う方向性もよりわかってるから、あとはいっしょにやるだけ、という感じでしょうか。
「ホントにそんな感じでしたね。編集したくないとかそういうのは話し合って、やっぱり何で(いまの日本のバンドは)こんなに顔が見えないんだろうってとこなんですよね。プレイヤーのエゴとかでもなくて、むしろ〈音楽に対する冒涜じゃないの?〉とか思っちゃって。でも、それは知らないだけかもわからないので、〈こういう作り方もあるよ〉っていうふうにしたかったっていうのはありますね」
ーー良くも悪くも技術が進化してて、最初からDTMがあたりまえの世代は〈音で顔が見える〉っていう感覚が薄いのかなって思ったりはします。
「チルウェイヴとか大好きだし、1〜2年前はハマって聴いてたんですけど、特に海外はあまりにも増えすぎちゃって、もともと匿名性が高いとはいえ、〈高すぎだろ!〉って(笑)」
ーー〈同じじゃん!〉っていう(笑)。
「エレクトロニカ/チルウェイヴ・コーナーを試聴してても、どれも同じだなと思って、〈この人たちなんで音楽やってるんだろ?〉とか考えちゃって。だって、エイフェックス・ツインはわかるじゃないですか、〈何でそういうのやらないんだ?〉って。いいスタジオで、いいマイクを使ってなくてもできるんですよ、絶対に。部屋の鳴りの特性さえ意識してれば。だから……ぜひ、参考にしてほしいですね(笑)」
ーー若いバンドで〈こいつらの音はいいな!〉ってバンドはいますか?
「OGRE YOU ASSHOLEは変わらず最高ですね。ペナッペナでも、歌が入る前にわかるから最高ですよね。それはandymoriもそうですね。ちょっとドンシャリ気味ですけど、なんかわかるんです。あと、きのこ帝国はいいなって思います。あれエンジニアが益子(樹)さんだしね。なんか不思議なのは、同じ機材を使って、例えコンプで歪ませてたとしても、顔が見えたりするんですよね。たぶん、彼らはナチュラルで、そんなにかけてないとは思うけど」
ーーやっぱり、そこは何を思って音楽をやってるかというか……
「ラウドさっていうのは、ファズを踏むことではないっていうね(笑)」
ーースタイルとか形式としてそれをやるんじゃなくて、この曲だから、この思いだから、この音が必要っていう、そこが大事ですよね。
「必然性がないと何の意味もないですからね。ライドのアンディ(・ベル)が〈あのノイズのなかにいると安心感がある〉って言ってて、つまりそれは必然性があるっていうことですよね。ただ盛り上げるためにノイズを出す、みたいなことには〈それ、何の意味があるの?〉って思うから、そこには反抗したかったですね。心の軋みとかを表現するために踏むものだからっていう」