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インタビュー

INTERVIEW(2)――耳が疲れない音



耳が疲れない音



ーーエレクトリカル・オーディオ・スタジオというと、当然アルビニ関連の作品が浮かびますが、実際に音作りを参考にしたアーティストはいるのでしょうか?

「シェラックは好きで聴いてましたけど、ただ……〈いい音って果たして何だろう?〉っていう」

ーー根本的な問いと向き合った?

「〈なんでマイブラのケヴィンはコンプをいっさい禁止してるのか?〉とかっていうところまで読み取っていかないと、(聴いた人が)ホントに堪能してくれるようなものには仕上がらないんじゃないかって考えてたときに、シカゴに行くことが決まったから、次のkilling Boy、次のART-SCHOOLではそこを追求しようって話はメンバーとしたんですよね」

ーー〈マイブラっぽくしよう〉とかではなく、ケヴィンぐらいの音に対するこだわりが必要だろうと。

「やっぱり、耳が疲れない音っていうところなんですよね。シェラックとか、あれだけノイジーなバンドでも疲れないですからね。中域をカットしてドンシャリみたいな音にするっていうのは、派手に聴こえるから最初はいいんですけど、何回も聴き返そうとは思わないんで、そこにはこだわりたかったですね」

ーー最近のUS産の作品だと、わりとローファイな音作りが流行っていますが、あのようなある種の生々しさ、ダイレクトさといったところも重要だったのでしょうか?

「アメリカのバンドって、どんなひどいローファイなバンドでも、ちゃんと中域を出してますからね。1回すごいいろんなバンドの周波数をチェックしたことがあるんですけど、たいがい良いアルバムは、すごくきれいな周波数でしたね。美しかった。日本の売れてるロック・バンドは、ものの見事に、なんちゅう汚い周波数のフォルムをしとるんだと(笑)。唯一BOOM BOOM SATELLITESはすごかったですね。ローエンドをカットしてないってことなんですけど、そこはたいがい日本ではカットするんですね。それはエンジニアさんやレコード会社さんが〈ここいらないでしょ?〉って。派手に聴こえないで、モサッとしちゃうからなんですけど、でもそこは残しとかないと良くないんですよね。スマパンの周波数も、ブンブンと同じように美しくて、美しい音って周波数で見ても美しいんだなって」

ーーアコースティックだから耳に疲れないというわけじゃなくて、ラウドでノイジーでも、いい音であれば疲れないわけですよね。でも、それはさっきもおっしゃったようにエンジニアさんとある種の共通言語が必要になってくる。今回のエンジニアも前回同様に星野誠さんですか?

「そうです。星野さんはずっとクラムボンをやられてた方なので、わかってるんですよ。ファーストのときに、最初コンプレッサーをかけようとしてたから、〈いいです、いいです。派手にしないでください〉って言ったら、めちゃくちゃ喜んでくれて。クライアントさんに〈派手にしたい〉って言われるからかけるけど、ホントは、エンジニアさんはそういうことしたくないんですよ。つまり誰が録っても同じになっちゃいますから。そこは前回いっしょにやってお互いわかってたんで、ちゃんとデッドな部屋で、デッドな鳴りの作り方で、浮遊していくギターだったり、ラウドさっていうのを表現できたかなと思いますね。だから、今回のアルバムとART-SCHOOLの次のアルバムっていうのは、自分のキャリアのなかでも相当満足度は高いんです。売り上げがどうのとかは関係なく、〈ああ、やっとできたな〉って思ってます」


カテゴリ : .com FLASH!

掲載: 2012年06月06日 18:00

更新: 2012年06月06日 18:00

インタヴュー・文/金子厚武