インタビュー

Plastic Tree “くちづけ”



Plastic Tree



[ interview ]

シングル“静脈”のリリースと同作を引っ提げてのツアー、そのファイナルとなる日本武道館公演〈テント③〉の開催と、メジャー・デビューから15周年というアニヴァーサリー・イヤーを着実に歩んでいるPlastic Tree。彼らより、今年第2弾のシングル“くちづけ”が到着した。前作と同じく新曲とそのライヴ・ヴァージョン、2曲の既発曲の〈Rebuild〉版の組み合わせで4形態が用意されている。

“静脈”の発表直後にドラムスの佐藤ケンケンが急病のため離脱し、ツアーは彼不在の状態で回ったものの、〈テント③〉には間に合って復帰。そのステージで初披露されたタイトル曲は、ボトムが刻む滑らかな疾走感とアンビエントなギター・サウンドのなかでシネマティックなピアノが一定の時を刻む、恋の微熱と醒めた視点が混在するラヴソング。そこで自身のルーツを素直に表出させつつ、15年前の楽曲にバンドの〈いま〉を注入した2曲も提示した今回のシングルは、前作と同様にバンドのこれまでの道程と現在をひとつにパッケージした作品となっている。

そして今回のインタヴューでは、テントを模した幻想的なセットのなかで繰り広げられた武道館公演の話題も。本編終了後の暗転から、その完全なる闇をそのまま演出としたアンコールでは、アブストラクトな音のレイヤーを徐々に重ね合わせることで別世界への入り口を設け、ようやく光が戻った舞台上にはピエロに扮して“空中ブランコ”を歌う有村竜太朗(ヴォーカル)がいた。その、ある種シアトリカルな仮面を用いることで表現された、彼らのライヴ・パフォーマンスにおける集大成とは? 新曲の制作エピソードと合わせて、有村と長谷川正(ベース)に訊いた。



隔離した空間のなかで行われている非現実的なこと



――まずは4月に行われた武道館公演のお話を少しさせていただきたいんですが、ともかく、非常に良かったです。直前に予期せぬアクシデントがありましたけども、〈テント〉というPlastic Treeの武道館ライヴに冠されるタイトルと、〈青の運命線〉という2月のシングル“静脈”のリリース・ツアーのタイトルとのダブルネームで。あの日は現在のPlastic Treeとこれまでの集大成を同時に体感できたステージかと思うんですが、やはりいちばん強烈に記憶に残っているのは、最後の“空中ブランコ”の演出で。

有村「あれは、やりたいなって思いつつも現実的には難しいのかな、と思ってたんですよね。でも今回のツアーのこととか、武道館でやることとかを考えて、メンバーとも話して強引にやったんですけど。自分的には、毎回〈テント〉っていうタイトルをつけてやってる武道館ライヴで、Plastic Treeなりの表現の集大成みたいなものをあえて1曲にまとめるのであれば、“空中ブランコ”っていう曲をああいう演出でやってみたいっていうのはありました」

――竜太朗さんのピエロや、他の3人の仮面を使用したヴィジュアルは〈テント〉から広がったイメージということですね?

有村「そうですね。もちろん〈テント〉のなかでいちばんやってみたい曲と演出だったっていうのもあるんですけど……今回のツアーに関しては、アンコールを自分らからやらせてほしい気持ちになったんですよね。ケンケンのことだったり、その前は俺の病気のことだったり、みんなに起きたことだけど、去年の地震のことだったり、いろんなことが起きたなかで、それでもあの武道館でのライヴの日っていうのは、俺らにとってすごく大事な一日で。正直、今回のツアーも〈武道館、できるのかなぁ〉って思いながら旅を回ってたし、ケンケンの体調のこともあってホントにギリギリまで悩んだ末にやれることになったんですけど……それってきっと、すごく幸せなことだから、サプライズっていうわけじゃないんですけど、観に来てくれた人にはあの場でしかやれない表現で返したいっていうのがあったんですよね」

有村竜太朗

――そこからはみんなでアイデアを出し合い?

有村「そうですね。やれるのはいいけど、じゃあどうしよっか、みたいな(笑)。本編が終わったあと、俺、ピエロになるのに多少時間かかるよね?とか、具体的なことを言えばそういうことなんですけど(笑)。でも、俺が不在のなかで、ナカちゃん(ナカヤマアキラ、ギター)と正くんが〈あの場を音だけでどこまで心地良い異空間にできるかやってみるよ〉って……そういう、いまのプラのメンバーでないとやれない演出を入れて、っていうのはありましたね」

――音だけであの空気を作るというのは、大変では?

長谷川「即興演奏ですし、実際やってみないとわからないところはありましたけどね。武道館っていう会場の空気感があってこそだったのかな。ただ、何が起きるのかわからないようなワクワク感を演出するには、ああいうおっきな会場っていいなって思いましたね」

――ちなみに〈テント〉という言葉から想像されるイメージは、Plastic Treeが表現したい世界観とリンクするところは大きいですか?

有村「そうですね。音楽性だとか、歌詞だとか、そこから感じ取る世界観だとかとは、もしかしたら直接的には関係ないのかなって思うんですけど、俺がもともと……というか、このバンドをずっとやってるので、もはや〈このバンドがもともと〉なんでしょうけど、なんか、バンドってサーカスみたいだなと思って。いろんなとこを旅しながら、テントとかの隔離した空間のなかで非現実的なことが行われてて、楽しくもあり、どこか哀しくもあり。そこでいろんな感情のブランコみたいなのが揺れてる。そういう自分にとっての原風景にあるサーカスのイメージが、バンド活動と似てるなっていうのがあって。実際そういう曲もあったりするし、自分たちの活動を他のことで比喩するならいちばん似てるなぁっていうのがあったんですよね。バンド結成した当時からずーっと」

――“空中ブランコ”の演出は、非現実感の極みだったと思いますよ。

有村「そうですね。沸点としてはいちばん高かったような気がするし、自分もやっててそうだったんですけど……でも、それは全体かなぁ。ちっちゃなライヴハウスとかでも同じ感覚ですし」


カテゴリ : .com FLASH!

掲載: 2012年06月20日 18:00

更新: 2012年06月20日 18:00

インタヴュー・文/土田真弓