INTERVIEW（3）——禍々しいけど、どこか甘い感じ

禍々しいけど、どこか甘い感じ

――ちなみに、〈暗いニューウェイヴ〉という括りのなかで、これは自分にとって最高だ!と思い浮かぶ曲ってあります?

長谷川「俺は……言ってしまえば、キュアーがいちばんですよね。キュアーのラヴソングとかすごい好きですね。“Lullaby”とか、切ないなぁって」

――“くちづけ”もまさにラヴソングですよね?

有村「まあ、言ってしまえばそうですね（笑）。ラヴソングです」

――それは楽曲を聴いた上で、ラヴソングでいこうと?

長谷川「いま話に出たキュアーの“Lullaby”とか、そのへんのやつは近くて。ちょっと禍々しいけど、でもどこか甘くて、みたいな世界観っていうのは、先に出来てた曲にもともとあって。で、曲の世界観がはっきりしているゆえに、曲から呼ばれる言葉も多かったんですよね。そういうのをメロディーに乗せながら整理してって物語を詰めてくみたいな作り方で、タイトルはいちばん最後につけました。それがいちばんこの曲の世界観を集約してる言葉かなと思って」

――楽曲から呼ばれた言葉とは?　〈鍵盤〉あたりはそうかもしれないですけど……。

有村「鍵盤はそうですね（笑）」

――あとは雨。武道館で初めて聴いたときは歌詞はわからない状態でしたけど、その時点で雨のイメージがありました。

有村「うん。自分的にもなんか雨で。聴いてていろんな絵がバンバン、フラッシュバックみたいに出てくる感じだったので、それが曲に映し出されてる心象風景なんだろうなぁって。ただそれもね、決められてる文字数のなかでどこまで言葉にして入れ込むかっていうのはホントにさじ加減というか。それぐらい、浮かんでる絵はすごくはっきりしてたんですよね」

――これまでのご自身の経験と、心象風景の積み重ねで?

有村「そうですね。半分フィクション、半分ノンフィクションで。ただ、そういう情景から触れられる感情みたいなのはあるんで、時折そういうものを入れつつっていう感じでしたね」

殴り書きを清書してもらう

――歌詞にも出てきますが、この楽曲全体を貫く鍵盤のフレーズが印象的で。これはどなたのアイデアですか?

有村「たぶん、はじめにこの二人で話してるときだったと思います。〈テテン・テテン……〉っていうフレーズはデモの段階から出来てて。それを鍵盤に直したのは、アキラですけど」

長谷川「楽器も特に特定してなかったんだよね?　ギターのような、ピアノのような、って。どの楽器に担わせるかはさておき、こういうフレーズがあったらいいよねーってデモにはギターで入れてたんですけど、やっぱりピアノのほうがいいかね?って差し替えてった感じですかね」

有村「デモはもう出来てるのに、正くんとこれでもか、これでもか、ってギターのダビング大会になっちゃって（笑）」

長谷川「そこだけ妙にシューゲっぽい感じに（笑）」

有村「で、最終的にアキラが聴いたら、〈これギター整理したほうがいいから、このフレーズ、鍵盤かギターで悩んでるんだったら鍵盤でいいんじゃない?〉っていう話になって（笑）」

――ギターはもういいよ、って（笑）?

有村「おもしろくなっちゃってね（笑）。どんどんどんどん、ギター道場みたいになってた（笑）」

長谷川「（笑）まあ、最終的には必要なものだけ残った感じですね」

――可能性を全部出したうえで、そこから引いていった?

長谷川「そうですね。最初は殴り書き状態で、思い浮かんだものは全部メモっとこうみたいな。要は部分部分で浮かんでて、のちのち一本のトラックで整理できるんだけど、違うチャンネルで録ってたらすごい数になっちゃった（笑）」

有村「俺が聴いたのは、イントロだけでもギターが15、6本入ってた（笑）。イントロにやたらこだわってて。もう途中から遊びでしたけどね（笑）」

――そこの段階でアキラさんとケンケンさんに聴いてもらって、各パートはそれぞれにお任せする感じですか?

長谷川「フレーズに関しては逆にチョイスしてもらった感じですかね。一応たたき台になるアイデアみたいなのをメモ帳に録っておいて、そこから〈これは要らないでしょう〉とか、〈俺だったらこうするけどね〉みたいなフレーズの組み立て方で、アキラに清書してもらった感じですね」